[参院選 現場から]<3>ひきこもり 家族も孤立…地縁薄れ 相談の場不足

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東京都多摩市の家族会で、ひきこもりの子を持つ親や心理カウンセラーらと打ち合わせをする大橋さん(中央)(10日、同市で)
東京都多摩市の家族会で、ひきこもりの子を持つ親や心理カウンセラーらと打ち合わせをする大橋さん(中央)(10日、同市で)

 関西地方の女性(73)は一軒家の自宅から数キロ離れたアパートで一人暮らしを始めて2年になる。

 夫を早くに亡くし、43歳になる長男と2人で暮らしてきた。長男は幼い頃から人の輪に入るのが苦手だった。専門学校を中退後、部品工場で働いた時期もあったが長続きせず、20歳代で自宅にこもりがちになった。30歳代になると、女性への暴言が悪化した。「うまくいかなくなったのは、全部お前のせいだ」と、どなり散らしたり、包丁を壁に突き刺したりした。

 暴言に耐えられず、ひきこもりの支援団体の助言で離れて暮らすことにした。長男の様子は支援団体を通じて知るだけだという。

 内閣府は3月、40~64歳のひきこもりが推計61万人に上るという調査結果を発表。若者だけではなく、中高年でも多いことが知られるようになった。80歳代の親が50歳代のひきこもりの子供と暮らす「8050問題」という言葉も生まれた。

          ◇

 「非の打ち所がなかった次男がまさか……」

 東京都内の70歳代の男性はつぶやいた。妻と40歳代の次男と3人で暮らす。

 次男は勉強が得意だった。ところが大学入学後に突然、床に落としたペンが不潔に思えるほどの潔癖性になった。周囲と距離ができ、卒業すると外に出なくなった。

 親族からは「育て方が悪い」「甘やかしている」と言われた。男性は「一番傷つく言葉だった。医師に相談しても治療法が見つからなかった」と振り返る。

 次男は仕事をしたい気持ちもあるようだが、一歩が踏み出せないのだという。「友達もおらず、社会とのつながり方がわからないようだ。私と妻が亡くなったら、どうなるのだろうか」。次男がほとんど自宅から出ない生活は約20年となった。

          ◇

 「期間が長くなるほど社会復帰までの期間も長くなる。困ったらすぐ相談できる環境が大事だ」。ひきこもりの本人や家族を支援するNPO法人「楽の会リーラ」(東京)の事務局で働く大橋史信さん(39)は話す。自身も約15年間ひきこもった経験を持つ。

 都内16か所で当事者が相談し合う「家族会」の設立に携わった。親が恥ずかしさから周囲に相談できず孤立する家族を多く見てきた。「今の社会は地縁が薄れ、家族が誰にも頼れず長期化、高齢化する」と語る。

 行政の支援は、都道府県などが運営する「ひきこもり地域支援センター」が中心だ。臨床心理士などを配置し、電話や来所で相談に乗る。センターは全国75か所。北海道は札幌市内だけで、担当者は「支所を道内に複数置きたいが予算上難しい」と明かす。

 参院選では、相談窓口拡充や居場所づくり、就労支援などを公約に掲げる党もあるが、言及は少ない。大橋さんは「もっと政治が目を向けてほしい」と訴える。

 和歌山大の宮西照夫名誉教授(精神医学)は「対応には精神科医や臨床心理士などの専門家集団が必要だ。地域支援センターの数も十分ではなく、公的支援を拡充すべきだ」と話す。

無断転載禁止
689509 0 参院選2019 2019/07/13 05:00:00 2019/09/19 15:41:31 ひきこもりの家族会の方や社協職員らと打ち合わせをするNPO法人楽の会リーラの大橋史信さん(中央)(10日、東京都多摩市で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190713-OYT1I50010-T.jpg?type=thumbnail

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