[参院選 現場から]<8>北方領 焦る元島民…尖閣沖 漁業者戸惑い

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 ビザなし渡航の自由訪問で今月、北方領土の色丹島しこたんとうを訪れた北海道根室市の木根きのね繁さん(82)は、島中心部の穴澗あなま湾に入港した際の光景にあっけに取られた。桟橋の向こうで、4棟の巨大な水産加工施設が完成間近だった。

 「巨大な水産基地に様変わりしつつある。これで島が返ってくるのだろうか」

 根室市で生まれた木根さんは幼い頃、タラ漁を営んでいた父らとともに、毎年5月から11月まで一家で同島北部の海岸で暮らした。8歳だった1945年9月、ソ連が侵攻。ソ連占領下で2年を過ごした後の47年11月、財産を奪われて島を追われ、根室に戻った。

 渡航では、思い出深い番屋跡に72年ぶりに足を踏み入れた。懐かしさの一方、「ロシア化」に恐ろしさも感じた。北部ではリゾート施設の建設計画があることも聞かされた。

 漁船の船主でもある木根さんは、現地のロシア人に「大きな水産工場ができるから日本の漁船も原材料を提供してもらえれば助かる」と言われ、返す言葉が見つからなかったという。

 昨年11月、シンガポールで行われた日露首脳会談の後、安倍首相は、56年の日ソ共同宣言を基に平和条約交渉を加速させることを明言した。しかし今年に入り、足踏み状態が続く。

 戦後に約1万7000人いた元島民は今年3月末に6000人を切り、平均年齢は84歳を超えた。千島歯舞諸島居住者連盟根室支部長で、国後島くなしりとう出身の宮谷内みやうち亮一さん(76)は「このままずるずると先送りされることは許されない。何としても動かしてほしい」と語気を強めた。

         ◇

 南の島の住民も外交・安全保障の行方を注視する。

 沖縄県・石垣島(石垣市)中心部の平得ひらえ大俣地区。防衛省は、新しく敷地約47ヘクタールの駐屯地をつくる計画を立て、3月に一部の造成工事に着工した。離島攻撃などで初動対応を担う警備部隊など自衛隊500~600人を配備する。中国の海洋進出に対抗する狙いだ。

 だが、島は割れている。建設地のすぐ東に住むパイナップル農家の当銘とうめ耕一さん(42)は「生活環境はがらっと変わる。有事の際に攻撃されたら命の危険もある」と憤る。

 一方、一本釣り漁師の比嘉幸秀さん(57)は「自衛隊が来れば中国への抑止力になるのではないか」と期待する。石垣市の尖閣諸島周辺は冬場、高級魚「アカマチ(ハマダイ)」の好漁場となる。だが、中国の公船の領海侵入が相次ぎ、今年は6月14日まで64日連続で領海の外側の接続水域を航行。2012年の尖閣国有化以来で最長となった。

 比嘉さんは「とても漁ができる環境じゃない」と尖閣周辺での漁をやめた。中国船とのトラブルを警戒し、仲間も出漁を避ける。「国境の島で起きていることを国全体の問題ととらえ、参院選でも議論を深めてほしい」。比嘉さんは岸壁に立ち、こうつぶやいた。

 「いい魚がたくさん釣れるあの海に、もう一度行きたいさ」(おわり)

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699747 0 参院選2019 2019/07/20 05:00:00 2019/09/19 15:44:12

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