完了しました
国会議事堂を正面から見ると、中央の塔を境にして左右対称になっています。正面に向かって右側が参議院、左側が衆議院。日本は二つの議院を置く「二院制」ですが、なぜ二つも議会が必要なのでしょうか。
二院制は世界では少数派?
アメリカやイギリスなど、G7と呼ばれる主要国首脳会議(サミット)の参加国も二院制を採用しています。ロシアも二院制。中国やウクライナは一院制です。デンマークやスウェーデン、ニュージーランドのように二院制から一院制に変えた国もあります。二院制だと意思決定が遅くなったり、経費がかかりすぎてしまったりしたためです。

世界の議会による国際機関「列国議会同盟」のまとめによると、二院制の国は79、一院制は113となっています。
二院制のメリットは
二院制のメリットは、二つの議院がそれぞれ独立して国政を話し合うことで、より多様な意見を反映でき、互いにチェックしあってバランスを取ることができることと言われています。
とはいえ、両院がまったく同じ力を持っていると、意見が異なった時に決めにくくなるので、それを避けるため、衆院の意見を重視する「衆議院の優越」というルールが設けられています。

まず、〈1〉首相の指名〈2〉予算の議決〈3〉条約の承認の3事項で衆参の意見が異なる場合は、原則的に衆院の意見が国会の議決となります。また、一般の法律案については、衆院で可決された法案が参院で否決された場合に、再び衆院で出席議員の3分の2以上が賛成すれば成立します。
衆院の優越が認められているのは、衆院の方が参院より国民の世論を反映していると考えられているからです。参院議員の任期は6年で、任期途中の解散もありません。一方、衆院議員の任期は、4年と短く、首相の判断で解散もあり、参院に比べて選挙も頻繁になります。このため、直近の国民の意思をより反映していると考えられています。
では、参院に何が期待されているかというと、それは「衆院や内閣に対するチェック」です。参院は任期が長く、解散もないため、一時の世論や内閣の動向を気にせず、腰を据えて法律案などを議論できます。参院が「良識の府」と言われるのはこのためです。
「ねじれ」は避けたい与党側
衆院と参院それぞれに役割を持たせて政治を進める仕組みですが、衆院と参院で多数派を占める政党が異なる「ねじれ」状態になると、国会運営は難しくなります。
自民党の麻生副総裁は2022年3月、自身が会長を務める麻生派の会合で「参院と衆院の勢力がずれてねじれ国会となると、次の衆院選に必ず影響してくる」と述べ、今夏の参院選の重要性を訴えました。
衆院で与党が3分の2以上の議席を占めていない場合、内閣が提出する法案が参院で否決され、衆院に戻されたとしても成立しない可能性があり、政治の停滞を招く恐れがあるからです。

岸田政権は2021年の衆院選で大勝しましたが、与党の獲得議席は293で、衆院定数465の3分の2には達していません。今夏の参院選の結果が注目されます。