維新、安全保障政策で独自色強める「岸田氏では物足りないと感じる保守層の支持得たい」
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日本維新の会が、安全保障政策で独自色を強めている。「憲法9条改正案」を発表したほか、防衛費の増額や、自衛目的でミサイル基地などを攻撃する敵基地攻撃能力の保有についても積極的な姿勢を示している。「核戦力共有」を巡る議論の必要性にも踏み込み、夏の参院選で自民党に対抗して保守層の切り崩しを狙っている。

「今まで想定しなかった事態が起きている。『非核三原則』や『専守防衛』をタブー視しているように見えるが、タブーなく議論するのが当たり前だ」
維新の足立康史・国会議員団政調会長は27日の衆院予算委員会で、ウクライナ情勢を踏まえ、安全保障政策の抜本的な見直しを岸田首相に迫った。
維新は参院選の公約策定に向け、安全保障政策の党内議論に力を入れている。自衛隊明記を盛り込んだ「憲法9条改正」の条文イメージをまとめたほか、国内総生産(GDP)比1%程度にとどまる日本の防衛費の増額にも前向きだ。自民党は自衛目的でミサイル発射基地などを破壊する「反撃能力」保有を提言したが、「『積極防衛能力』を保有すべきだ」(松井代表)として、同調する姿勢を示している。
維新の安保政策は元々、自民党と近いが、核を巡る政策では差別化を図っている。核戦力共有は、北大西洋条約機構(NATO)の非核保有国が自国内に米軍の核兵器を配備し、共同運用する仕組みだ。
岸田首相が「戦争被爆国として戦後大切にしてきた考えは維持するべきだ」として核戦力共有を否定するのに対し、維新は議論の必要性を主張しており、参院選公約に盛り込む方向で検討している。維新幹部は「ハト派の宏池会出身の岸田氏では物足りないと感じる保守層の支持を得たい」と解説する。
維新がアピール色を強める背景には、参院選への危機感がある。衆院選では議席を約4倍に伸ばしたが、地方の首長選での苦戦や所属議員の失言なども目立ち、党勢の減速傾向を危ぶむ声があるためだ。
核に関する発信は危うさもはらむ。被爆者団体からの抗議で政府への提言を修正し、非核三原則の見直し議論の要請を取り消した経緯もある。党内からは「踏み込み過ぎて極端なものにならないよう注意が必要だ」(幹部)との声も出ている。