[不測の時代に 22参院選]<2>食料自給 減る一方…輸入価格高騰 高まる危機感

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コメから小麦へ

小麦の生育ぶりを従業員と確認する斎藤さん(左)(10日、新潟市で)
小麦の生育ぶりを従業員と確認する斎藤さん(左)(10日、新潟市で)

 日本有数の米どころ、新潟市の水田地帯に、小麦畑が広がる一画がある。「ようやくここまでこぎ着けた」。6月上旬、農家の斎藤 隆美たかよし さん(75)は黄金色に揺れる穂波の中で手応えを感じていた。

 江戸時代から代々、この地で稲作を営んできた。2008年には農業法人「新潟ひかりっこ」を設立。20人の従業員を抱え、主力のコシヒカリを中心に生産規模を広げてきた。

 2年前、高級パン店の県内進出を伝えるニュースが、国内で消費される小麦の9割近くが海外産で賄われている現状を伝えていた。消費者の「コメ離れ」が進み、コロナ禍の外食需要の不振で米価が下落する一方、輸入に依存する小麦の価格は高騰が続いていた。「日本人はうどんやパスタが好きだから、小麦を作ったら売れるんじゃないか」

 20年秋に所有する165ヘクタールの田んぼのうち、試しに2ヘクタールを小麦に転作した。乾燥を好む小麦が育つか不安だったが、土地を平らにして水はけを良くしたり、病害虫対策の農薬を散布したりして、8か月後には約8トンの収穫ができた。

 今季は約25ヘクタールで、パンに適した品種「ゆきちから」などを栽培し、約100トンを収穫。地元の製パン会社に出荷され、9月頃から新潟市内で販売される予定だ。

 ただ、小麦栽培に必要な肥料の量はコメの2・5倍。種をまく農業機械の購入費用もかさむ。コメ以外の作物に転作した場合に受け取れる交付金などもあるが、小麦だけでは利益は出ない。

 それでも斎藤さんは、「大規模に作って生産効率を上げれば、いつか採算は取れる。より需要のある農作物にチャレンジした方が、農家の未来は明るくなる」と期待を込める。

過去最低37%

 ロシアによるウクライナ侵攻を機に、食料安全保障を巡る議論が盛んになっている。日本は食料の多くを輸入に頼っているからだ。

 農林水産省によると、20年度の食料自給率(カロリーベース)は過去最低の37%。現在の方法で統計を取り始めた1965年度の73%から半減し、先進国の中で最低水準だ。

 もし日本の周辺で紛争が起き、食料輸入がストップしたら、家庭の食卓はどうなるのか。

 農水省が試算した一例では、夕食の献立は「白米1杯、野菜いため2皿、焼き魚1切れ」のみとなる。牛乳は4日間でコップ1杯、卵は13日間で1個、焼き肉は14日間で1皿しか食べられない。1日の摂取カロリー量は1727キロ・カロリーと国民1人が必要とする2169キロ・カロリーに満たない。

 宮城大の大泉一貫名誉教授(農業経済学)は「諸外国では、自分たちの食べる物は自国で賄うという意識が浸透している。戦後の日本は平和が続き、食料が足りなくなる想定がなく、危機感が薄すぎた。まずは自給率の低下を食い止める必要がある」と指摘する。

農業を魅力的に

 国は2030年度までに、食料自給率を45%に引き上げる目標を掲げるが、農業の担い手は減り続けている。20年の総農家数は約175万戸で、30年前と比べて半数に落ち込んだ。高齢化も進む。

ビニールハウスでトマト栽培に励む加藤さん(24日、東京都練馬区で)=今泉遼撮影
ビニールハウスでトマト栽培に励む加藤さん(24日、東京都練馬区で)=今泉遼撮影

 東京都練馬区の野菜農家、加藤晴久さん(63)も後継者難に悩む一人だ。

 マンションの大家をしながら、54アールの畑で伝統野菜「練馬大根」やトマト、ジャガイモなどを栽培し、畑に併設している直売所などで販売している。一人娘は今春、大学を卒業してIT企業に就職したばかり。妻と2人で農作業をする毎日だが、「重労働で足腰が痛い。あと何年続けられるかわからない」とこぼす。

 農家仲間の中には70歳代でも後継ぎがおらず、1人で細々と畑仕事を続ける人もいる。

 加藤さんは訴える。「いったん離農すると、農地は宅地や荒廃地となり、簡単には元に戻らない。国産食料の増産に関心が高まっている今こそ、農家の子弟だけでなく、農業に関心のある若者が参入しやすい環境を整えるべきだ」

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3119587 0 参院選 2022/06/28 05:00:00 2022/06/28 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220628-OYT1I50011-T.jpg?type=thumbnail

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