[注目区を行く・神奈川]合併選挙「+1」巡る混戦
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「2人を4位以内に。最後まで全力疾走すれば、必ず達成できる」

参院選公示日の22日午前、横浜中華街に隣接するホール。3期目を目指す自民現職の三原じゅん子(57)の出陣式で自民党神奈川県連会長の小泉進次郎(41)がひときわ声を大きくすると、600人を超える支援者は熱気に包まれた。
続く前首相の菅義偉(73)は「私の見方はちょっと違う」と切り出し、小泉の情勢分析にクギを刺した。「与野党入り乱れて、誰が勝っても負けてもおかしくない状況にある」
神奈川選挙区は今回、異例の「合併選挙」となった。改選の4議席に加え、非改選の欠員1も補うため、5人が当選する。上位4人の任期は6年だが、5位の当選者は3年だけだ。「+(プラス)1議席」が各党の戦略にも影響を及ぼす。
元女優の三原は、6年前の参院選では100万票余りを獲得し、トップ当選した。三原が「政治の師」と仰ぐ菅は、連日メールで報告を受け、激励する。
自民は三原に加え、約5年ぶりの国政復帰を狙う元みんなの党代表の浅尾慶一郎(58)を公認した。神奈川での2人擁立は1998年以来24年ぶり。この時は共倒れに終わり、県連には今でもトラウマとして深く刻まれている。
浅尾は民主党時代に神奈川選挙区で参院議員を約11年間務めた。みんなの党の結党に参加して2009年に衆院にくら替えし、神奈川4区(鎌倉市など)で17年に落選するまで比例復活を含めて連続3回当選した。副総裁の麻生太郎(81)が率いる「麻生派」には、親しい議員が多い。前幹事長の甘利明(72)を筆頭として、麻生派の地元国会議員が全面支援する。昨年秋の党総裁選では、菅を出馬断念に追い込む流れを作った首相の岸田文雄(64)を甘利がいち早く支持した因縁があり、「菅と甘利の代理戦争」との見方もある。
浅尾の選対本部長に就いた甘利は、22日に浅尾が県内4か所で行った「第一声」に顔を出し、「浅尾さんをどうしても戦力に組み入れたい」と訴えた。麻生も26日の演説で、「十分に(自民の)票はある。うまく割って2人を神奈川から出していただきたい」と支援を求めた。
自民の組織票の多くは知名度で劣る浅尾に回るとされ、三原は周囲に「菅先生頼みの選挙だ」と不安を漏らす。県連を束ねる小泉も「この選挙は複雑で、日本一難しい」と頭を悩ませる。
「4位以内」を至上命令とするのは、公明党も一緒だ。菅は23日夜、公明現職の三浦信祐(47)の応援にも駆けつけ、「神奈川で過半数を与党で占めさせてください」と呼びかけた。5位当選ならば、3年後に同じ党の改選議員との競合が必至で、各陣営には「5位は落選と同じ」との共通認識がある。
一方、同じく2人を擁立した立憲民主党は、共倒れの危機に直面する。党勢が低迷する中、前県議の寺崎雄介(50)と宇宙航空研究開発機構(
党内からは「1人に絞ると判断したならやり遂げるべきだった。民主党時代からの『決められない体質』が出た」と嘆く声も出た。党公約の「生活安全保障」などを訴える立民は、5位での当選を含む「1議席確保」に目標を切り替えた。当選により近いと判断した候補に支援を集中することも検討している。
日本維新の会は前回19年選で、神奈川県知事を2期務めた松沢成文(64)を擁立し、初の議席を得た。今回は、21年8月の横浜市長選に出馬するため失職した松沢を再び立て、「重点区」に位置づける。
過去3回は連続で次点の5位に終わった共産党は、「+1」を好機と捉える。委員長の志位和夫(67)は23日、横浜市の街頭に立ち、「大接戦に持ち込みつつある。今度こそ勝たせていただきたい」と声をからした。
岸田内閣の安定に向け、
(栗山紘尚、横浜支局 田村直広)