[不測の時代に 22参院選]<7>男性育休 まだ無理解…上司ら妨げ 4人に1人

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口止め

 「言動には気をつけて。育休を取ることを誰もが理解してくれると思わない方がいいぞ」。中国地方の中学校に勤める男性教諭(33)は、1年半前に校長から言われた言葉が忘れられない。

 2020年6月、妻の妊娠がわかった。夫婦にとって待望の第1子。妻一人に育児を押しつけたくないと、半年後、校長に1年間の育児休業(育休)を取りたいと申し出た。だが、態度は冷たかった。「生徒には言うなよ」。強い口調でくぎを刺された。

近所の公園で長女と砂遊びをする男性教諭(6月28日)
近所の公園で長女と砂遊びをする男性教諭(6月28日)

 当時、2年生のクラス担任で、ソフトテニス部の顧問を務めていた。「今年は準優勝だったけど、来年こそは優勝したい」「3年生になったら、受験の相談に乗ってほしい」。生徒からそう声をかけられるが、自分は翌春、学校からいなくなる。育休を取ることに後ろめたさを感じ始め、ストレスで食事が喉を通らなくなった。気づけば、体重が5キロも落ちていた。

 「今まで隠していて、ごめん」。昨年3月末の終業式の前日、新年度から育休を取り、担任から外れることを生徒たちに初めて伝えた。突然のことに驚き、泣き出す子もいた。嫌われることも覚悟していた。だが逆に「子育て頑張ってね」と励まされ、涙があふれた。

 男性は今年3月に育休を終え、4月から同じ学校で教壇に立つ。「いつか教え子たちが親となる時、育休を取るのが当たり前の社会になってほしい」。1歳になった長女を抱きながら、そう願う。

取得12%

 厚生労働省によると、20年度の育休取得率は女性の81・6%に対し、男性は12・7%。増加傾向にはあるが、女性とはいまだ大きな開きがある。背景には企業側の理解不足があるとされ、男性の育休制度の利用を上司らが妨げる「パタニティー・ハラスメント」(パタハラ)の被害は後を絶たない。厚労省が同年度、過去5年間に勤務先の育児制度を利用しようとした男性500人に行った調査では、4人に1人が「パタハラを受けた」などと回答した。

 国は男性の育休取得を促そうと、今年4月施行の改正育児・介護休業法で、企業に対し、従業員に育休制度を周知し、取得するかどうか確認することを義務づけた。しかし、その後も連合の労働相談窓口には、「人手不足を理由に取得のめどさえ立たない」(40歳代、医療福祉)、「上司からの意思確認があいまいで、育休をとらせてくれないのかと不安になる」(30歳代、サービス業)と男性から不安の声が寄せられている。

 東レ経営研究所の塚越学・チーフコンサルタントは「職場の無理解が育休をとりづらい雰囲気を作ってきた。パタハラに代表されるように現状はまだまだハードルが高いので、改正法施行後も政府は取得促進を後押しする施策を続けなければいけない」と指摘する。

コロナで一人に

 コロナ禍では外出を自粛するムードが広がったことで、妊産婦が行政や友人を頼れずに一人で不安を抱え込むなど、育児環境が悪化した。福岡市中央区の松田ゆきさん(36)が長男・ 怜利れいり ちゃん(2)を出産したのは20年2月。新型コロナの感染者が国内で初めて確認されたばかりで、離乳食の作り方講座や親子イベントなどは感染対策を理由に軒並み中止となった。

 「母乳の出が悪い」「うんちが出ないのは離乳食が悪いのかな」――。初めての育児で不安が尽きないのに、子連れで外出する機会は限られ、「ママ友」も作れなかった。移動自粛で帰省できず、親も頼れない。イライラしてささいなことで夫とけんかになり、泣き叫ぶ息子を前に何をすればいいかわからず、一人ぼうぜんとしたこともある。

 育児に悩む親子が集える場を作ろうと昨年夏、キッズスペースを備え、月齢に合わせた離乳食などを提供するカフェを開いた。客同士がママ友になることもあり、たわいもない子育ての話は時に、男性が育休を取得する難しさに及ぶこともある。松田さんは「孤独を感じながらの子育ては本当につらい。男性が育児に参加しやすくなるような社会になってほしい」と願ってやまない。

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3135193 0 参院選 2022/07/03 05:00:00 2022/07/03 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/07/20220703-OYT1I50015-T.jpg?type=thumbnail

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