<消費税・財政再建>教育無償化か増税凍結か
重要争点の一つが、2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げだ。安倍首相は9月25日の記者会見で、衆院解散の理由として、引き上げに伴う増収(約5.6兆円)の使途変更を挙げた。
政府は、国の借金返済を減らし、1.5兆円前後を幼稚園・保育園の無償化や給付型奨学金支給の拡充に振り向ける方向で調整している。自民党公約には「増収分について、子育て世代への投資を集中することで、『全世代型社会保障』へと大きく
公明党も自民党と足並みをそろえ、消費税の増収分を、幼児教育無償化や私立高校授業料の実質無償化などの「安定的な財源」と位置づける。増税の際には、食品などの税率を8%に据え置く軽減税率を「確実に実施する」としている。
対する野党は、消費税増税分を教育目的に使途変更すると主張していた民進党が分裂。同党の多くが合流した希望の党は、「景気回復を確実にするため、凍結する」とし、論争を「増税に賛成か反対か」の構図に持ち込もうとしている。選挙戦で希望と連携する日本維新の会も「凍結」を主張する。
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(写真は、イメージです)
民進の一部が結成した立憲民主党も、「直ちに引き上げることはできない」として、民進時代の主張とは一線を画した。共産、社民両党も、10%への増税中止を主張している。
消費税を巡る各党の主張で共通するのは、国の借金返済のペースが鈍る可能性が高い、という点だ。国の借金は今年6月末時点で1078兆円に達し、バブル経済期並みに名目3%以上の経済成長を遂げたとしても、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)は8.2兆円の赤字となる。いずれも世界最悪の水準で、財政健全化への取り組みも焦点だ。
自民は「財政健全化の旗は明確に掲げつつ、不断の歳入・歳出改革努力を徹底する」とした。2020年度のPB黒字化という政府の財政健全化目標について、首相が「困難だ」との認識を示したことを受け、「目標達成に向けた具体的計画を策定する」ことも明記した。
希望と維新は、消費増税の前に国会議員定数の削減や国家公務員人件費のカットなど「身を切る改革」で財源を生み出すと主張する。希望は、大企業が抱える内部留保への課税や国有資産売却、政府系金融機関の廃止で財政健全化を目指すとし、「2020年度PB黒字化」は「現実的な目標に訂正する」とした。
衆院選(22日投開票)に向け、与野党の論戦が活発になってきた。日本が直面する経済や外交・安全保障の課題に、各党はどう取り組もうとしているのか。公約や主張を分析する。