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今回の衆院選立候補者に占める女性の割合は、全体の2割弱にとどまった。男女の候補者数の均等を目指す「政治分野における男女共同参画推進法」が2018年に施行されているが、隔たりがある。あす31日の投開票を経て、女性議員がどのくらい誕生するのかも注目される。(駒崎雄大)


「多様性ない」
「新しい未来を作っていこうとする国政の場には、多様性がありません」。東京都内の小選挙区から立候補した新人の女性候補は街頭演説で、衆院議員の1割程度にとどまる女性の割合を挙げ、訴えている。
幼い2人の子どもがいて、仕事と子育ての両立の難しさを実感してきたという候補。以前勤務していた職場では、子どもが体調を崩して仕事を休んだ時、周囲の風当たりが強く、昇進や昇給にも影響があると感じた。「自分の経験を生かして政治に携わり、社会を変えたい」と考え、今回、立候補を決めたという。
この候補は「票集めのために女性の数を積み増すだけでは意味がない。志を持って、政策立案ができる女性議員を増やしていくべきだ」と話す。
「党がやる気を」
今回の衆院選には1051人が立候補している。このうち女性は186人で、全体の17・70%だった。女性候補者の割合が戦後最高となった17年の前回選と比べて23人少なく、割合は0・01ポイント下がった。
政府は昨年末に閣議決定した「第5次男女共同参画基本計画」で、衆参両院選挙の女性候補者の比率を25年までに35%にする目標を掲げているが、実態とは差がある。政党別の女性候補の割合をみると、与党は自民党9・8%(33人)、公明党7・5%(4人)。野党は立憲民主党18・3%(44人)、共産党35・4%(46人)、国民民主党29・6%(8人)などとなっている。
今回、都内の小選挙区から立候補した元議員の女性候補は「党がやる気を出さなければ、女性候補を増やすことはできないだろう」とため息をつく。
議員は165位
衆院選で当選し、議員となる女性の割合はさらに低い。内閣府によると、当選者のうち女性が占める割合は、1990年に2・3%だったのが、前回選では10・1%にまで増えた。
しかし、各国議会で作る列国議会同盟(IPU)の今年10月時点の調査結果を見ると、日本の国会議員(衆院)に占める女性の割合は依然として低く、調査対象となった世界193か国中165位だ。
女性の比率の高い国では、候補者や議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」を導入している国が多い。内閣府の調べでは20年2月時点で118か国。主な先進国では、フランス31位(39・5%)、ドイツ42位(34・9%)、英国44位(34・2%)などとなっており、いずれも日本を大きく上回る。
三重大の岩本美砂子教授(政治学)は「女性候補を増やすために、国として『クオータ制』の活用や、女性候補が少ない政党への政党助成金を減額するといった対策を取ることが必要なのではないか。各党も組織として取り組みを急ぐべきだ」と指摘している。
◆政治分野における男女共同参画推進法= 2018年5月に施行され、国会や地方議会の選挙で男女の候補者数ができる限り均等になることを目指し、政党や政治団体等に取り組みを求めている。21年6月の改正で議員や候補者へのセクハラやマタハラの対策も盛り込まれた。数値目標の設定などの自主的な取り組みを促すが、強制力や罰則はない。