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(21)「地域の情」か「政権与党」か

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◆小倉の土に

 「裸の庄ちゃん」は、白いスーツを着て、自転車にまたがっていた。

 「私が地元のジミ、ジミ、庄三郎でございます。小倉生まれの小倉育ち。北九州市民党。地元の活性化のために、やり残したことがあるんです」

 7日午後、元郵政相・自見庄三郎はスピーカー付きの自転車で、北九州市小倉南区のマンモス団地を小一時間も走った。選挙カーには妻子を乗せ、ふる里の「温情」に訴える戦いだ。

 郵政民営化関連法案に反対した自見は、「裸の庄ちゃん、裸一貫でがんばります」と、福岡10区に無所属で出馬した。

 「私はいずれ小倉の土になる人間。石にかじりついてでも、泥水をすすってでも、やる気持ちです」

 7日夕、小倉北区の百貨店前で開いた総決起集会では、涙ぐんで絶叫した。会場は悲壮感が漂い、自見派の市議・日野雄二(52)は「北九州のためにだれを選ぶかの選挙だ。ふる里を、知らない人に託していいのか」と訴えた。

 首相の小泉純一郎が送り込んだ「刺客」は、前回は比例選(九州ブロック)で当選した西川京子。西川の勢いに、三つどもえの戦いを繰り広げる民主党前議員・城井崇は、「『漁夫の利』なんてとんでもない。『刺客台風』に吹き飛ばされそうな雑草、ですよ」と言う。

 7日夜、小倉南区の催事場で、西川の初めての個人演説会が開かれた。主催は自民党小倉南支部。いったん、自見に仮の推薦状を出したが、後に撤回し、西川推薦を決めた支部だ。

 西川の声は弾んでいた。

 「政権与党として、日本の将来のために改革を推進します。ミカン箱の上であいさつした瞬間、本当に勝ちたいと思いました。結構いい線いってます……」

 当初は、法定得票数の獲得すら危ぶんでいた。10区内の自民党市議13人の大半が自見についたからだ。党県連幹事長・中村明彦(50)も8月16日にあいさつに来た西川を「ミカン箱に乗って1人で頑張って下さい」と突き放した。

 だが、情勢は変わった。

 厳しい言葉を投げつけられた西川が、開き直ってミカン箱に乗り、街頭演説をするパフォーマンスが話題を呼び、9月3日に小泉が小倉を訪れた際は、自見派と見られていた数人の県議や市議も姿を見せた。企業の朝礼や土建業者への訪問もできるようになった。

 7日夜の西川演説会。自民党の元市議会議長・片山尹(58)は「情よりも、国家を託せる人、政権与党の人を応援するしかない」と西川支持を鮮明にした。

 演壇前にはミカン箱が飾られた。当初は突き放した中村も、こう変わった。

 「小泉総裁は『自民党をぶっつぶす』と言っておったわけだが、間違いなく、自民党はぶっ壊れました。新しい近代政党として脱皮をした。その象徴が西川候補なのであります」

◆因縁の対決

 「気がついたらパンツ一丁。たまらんなあと思うとったら、地元の皆さんがあったかい毛布でくるんでくれた」

 自民党公認を得られず、宮崎2区に無所属で出馬した前議員・江藤拓は2日夜、延岡市の個人演説会で涙声になった。公民館の広間には、必勝鉢巻きを締めた100人余りの支持者や県農民連盟の幹部、公明党市議らの顔があった。

 自民党宮崎県連は最終的に、党本部が公認した前参院議員・上杉光弘の「全力支援」を決めた。しかし、江藤を個人的に支援することも容認した。

 2区内の県議は、江藤支持と上杉支持に真っ二つに割れている。対抗馬が地元に縁のない「落下傘候補」でなく、しかも「よりによって上杉だった」からだ。

 宮崎の自民党系県議は26年前の県知事がらみの汚職事件をきっかけに、上杉派と、江藤の父である元衆院議員・江藤隆美に近いグループに分かれて長年、対立している。2003年衆院選も両派の争いだった。江藤と、上杉派が推す黒木健司の間で公認調整ができず、ともに無所属で戦って勝ち上がった江藤が追加公認された。

 今回は、江藤に上杉本人が挑み、黒木がくら替えして民主党から出馬するという、因縁の三つどもえ対決。自民党支持団体は困惑している。有力団体の県農民連盟は2区内の6支部のうち、延岡など4支部が江藤、西都支部が上杉、児湯支部が黒木をそれぞれ推薦した。

 上杉の訴えも、「小泉改革」の一辺倒ではない。8月30日の出陣式では、こう叫んで土下座した。

 「政権政党でなければ仕事はできない。宮崎県は社会資本整備が遅れている。公共事業は悪ではない。高速道路整備費用の確保は私に任せていただきたい」

 上杉選対本部長の県議・坂口博美(57)は「政党は闘争集団だ。協同組合じゃない。トップの考え方と違うならとどまるべきじゃない」と、党公認の強みを武器に江藤派をけん制する。

 2日の個人演説会。江藤は地元支持者の感情を揺さぶろうと言葉を重ねた。

 「私が負けるということは、皆さんの優しい気持ちも踏みつぶされるということです。『刺客』になった人たちは、当選したら、小泉さんにひたすら忠誠を尽くす。皆さんの顔なんて見ない。そんな議員、作って何になりますか。それが地域の代表ですか?」(敬称略)

衆院選の顔ぶれ
◇福岡10区◇
田村 貴昭 44
城井  崇 32 前《1》
西川 京子 59 前《2》
小島潤一郎 34
自見庄三郎 59 無〈自〉 前《7》
◇宮崎2区◇
上杉 光弘 63
江藤  拓 45 無〈自〉 前《1》
黒木 健司 52
(届け出順)
◎〈自〉は、郵政民営化関連法案の衆院採決で反対して自民党公認にならなかった前議員
2005年9月9日  読売新聞)
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