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名指しを避け、皆の行動を求める…米大統領就任演説<2>

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(演説抜粋)
“So now, on this hallowed ground where just days ago violence sought to shake this Capitol’s very foundation, we come together as one nation, under God, indivisible, to carry out the peaceful transfer of power as we have for more than two centuries.”

(和訳)
 そして今、この神聖な地、ほんの数日前に暴力がこの議事堂のまさに土台を揺るがそうとした場所に、我々は集まった。一つの国、神の下、不可分のものとして。2世紀以上の間続けてきた、平和な政権移行を行うために。

「人」ではなく「行為」を主語にする

 英語が日本語と大きく違う点の一つは、行為の主体をはっきりさせることだとよく言われる。確かに日本語で話す時、主語の省略は頻繁にあるし、言葉の上で行為者を曖昧にすることも多い。だが、それは英語でも同様だと感じるのが、上の “violence sought to shake this Capitol’s very foundation” の部分だ。

 議事堂に乱入したのは、そこに集まり、暴徒化した一部の人間だ。ほんの2週間前の出来事で、具体的、直接的な表現はいくらでもできただろう。だが、バイデン氏が主語に据えたのは「行為」だった。少し抽象的、文学的な響きを帯びている。

 抜粋は、演説の序盤にある。全体の概要を示す段階のため、「誰」がよりも「何」が問題か提示することを重視したのだろう。日本語なら「土台が暴力によって揺るがされた」と受け身形の表現とするところか。

 同様の例として思い浮かぶのは、2016年5月、2期目最終年のオバマ大統領が、現職の米大統領として初めて被爆地・広島を訪ねた時のスピーチだ。

オバマ氏は “Seventy-one years ago, on a bright cloudless morning, death fell from the sky”(71年前、雲一つない明るい朝に、死が空から降ってきた)と表現した。この主語の選択には当時も多くの議論が起きたが、彼の核兵器廃絶への強い意志と周囲からの期待、投下国として一枚岩ではない自国の世論など、幅広く厳しい事情への苦慮が推察できる。

何を主語にするか。スピーチの種類や聴衆、その文が与える効果など、考慮すべき要素は多い。日本語でも効果的に使うことは難しい。英語学習者としては、このような表現を見た時、その理由を探る練習をして、理解力の向上に役立てたい。

音楽のように繰り返されるテーマ

 この演説を音楽に例えると、全体のテーマを示す序奏があり、そのテーマを少しずつ変化させて繰り返す、クラシックの一形式のような印象を受ける。

 中心となるテーマは、“Division”(分断)と“Unity”(結束)だ。

Police release tear gas into a crowd of pro-Trump protesters during clashes at the U.S. Capitol in Washington,on Jan.6.(Reuters file photo)
Police release tear gas into a crowd of pro-Trump protesters during clashes at the U.S. Capitol in Washington,on Jan.6.(Reuters file photo)

 特に1月6日の暴動と、それに先立つ昨年秋の大統領選以降の動きをうかがわせる部分は、“And here we stand, just days after a riotous mob thought they could use violence to silence the will of the people …”(我々はこの地に立つ。暴力によって人々の意志表明を黙らせられると暴徒が考えた、その数日後に)など、6か所は見つけられた。

 同様に結束を呼びかける表現も、“We can do this if we open our souls instead of hardening our hearts.”(我々にはできる。心を硬くする代わりに、魂を開けば)など多様だ。“I know speaking of unity can sound to some like a foolish fantasy.”(結束を語ることは、一部の人には馬鹿な幻想のように響くかもしれないと分かっている)と、少し砕けた表現もある。ちなみに上の2文には頭韻も使われている。声に出して読み、響きを感じてほしい。

 苦しい時、「彼ら」「我々」と敵味方を作りたくなるのは人間のさがだ。英語でも “Us vs. them mentality” と呼ばれる。バイデン氏はそれを極力避け、皆でまとまろうと呼びかける。年長の先達が、後進を教え諭すかのようだ。

 新型コロナや環境問題など他の課題に比べても多いリピート回数に、このテーマを国民の心に広く共鳴させたいとの願いがにじみ出る。

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1889166 0 ちょい読み英語 2021/03/06 09:00:00 2021/04/01 16:28:46 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210305-OYT8I50056-T.jpg?type=thumbnail

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