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物語の背景、発想を探る…カズオ・イシグロインタビュー<1>

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 長崎で生まれ、2017年にノーベル文学賞を受賞した英国の作家、カズオ・イシグロ(Kazuo Ishiguro)さん(66)が、受賞後初となる新刊「クララとお日さま」(早川書房、原題 “Klara and the Sun”)を3月2日に出版した。世界同時発売を前に行われた共同インタビューから、作品だけでなく、英語や異文化を学び、理解するヒントも探してみたい。(発言はテーマごとに抜き出しており、時間的な前後がある)

(演説抜粋)
 “I’ve been interested in artificial intelligence for a number of years now, but I hadn’t really thought about writing a novel about it.
 “But I’ve been involved in many interesting conversations with experts in that field …
 “So, it was an area that I’d become very interested in just for its own sake.
 “But around 2014 or 2015, that was the first time it occurred to me that I could actually use an artificial intelligence character in one of my fictions.”

(和訳)
 今ではもう何年も、AI(人工知能)に関心を持っているが、(当初は)AI についての小説を書こうとは思っていなかった。
 それでも、その分野の専門家との興味深い対話に多く関わってきた。(中略)
 だから、AI は、それそのものとして非常に興味を持つようになった分野だった。
 でも、2014年か15年ごろになって初めて、AI を自分が書く物語の一つで登場人物に使えると思いついた。

AIロボットを主人公に

 同書は、近未来の社会で子どもの友達になり、成長を助けるよう開発されたロボット(artificial friend=AF)のクララが主人公だ。14歳で病弱な女の子、ジョジーの家に買われたクララは、家族を中心にした人たちと関わり合う中で、人間社会の知識や感情を観察し、吸収する。

 冒頭の答えは、AI を主人公にすることについての経緯を話したものだ。

 現在完了、過去完了と手強い時制が続く。“I’ve been interested …” は今に続く継続の状態だ。続く “I hadn’t …” は、経験を表す完了形が過去になっている。これがいつごろのことかは、後の段落でわかるが、この発言の時点では、「当初は」という程度にとらえれば良い。

 複雑な時制に見えるが、頭の中に一本の直線を思い浮かべて、そこに説明された事象を置くようにすると整理しやすい。聞くだけでなく、自分で何度も話す練習をして、慣れていきたい。

 さて、イシグロ氏の過去の作品で、先端の科学・技術と社会の関係を描いたものには「わたしを離さないで」(“Never Let Me Go”)がある。インタビューでも、それとの違いについて質問が出た。

 “It seemed to me having a central character who was an AI robot would give me some of the same advantages. In fact, some more than I had in ‘Never Let Me Go,’ which is that I could actually focus on human beings and the human world from a new, different perspective.”

 (AI ロボットを主人公に据えることで、いくつか同様に有利な点があると思えた。実際には、人間や人間世界について、新しく異なる観点から焦点を当てられる点で、「わたしを…」を少し上回る)

 多くの前提を共有するインタビューでは、省略される事柄も多い。上の文では “the same advantages” の内容で、明確に示されていない。

 ヒントは、「わたしを…」は、臓器提供のために作られた人間のクローンが主人公であることだ。科学技術で生み出されたものから人間社会を見る、という部分は共通している。「クララ…」ではさらに、人間ではない AI が見る世界という新しい描き方が、より一歩進んだ点だとのイシグロ氏の考えが読み取れる。

創り出した人物が、ひとりでに動き出す?

(演説抜粋)
 “The aspect of her logic actually was what was appealing to me. I was actually drawn to the very fact that she would have very limited information and she’ll draw – to us – some very crazy conclusions.
 “And so that was, for me, something that was very attractive and appealing.”

(和訳)
 クララの理屈づけの仕方は、私には魅力的だった。彼女はとても限られた情報しかなく、その結果、我々には、とても変に見える結論を導き出すというまさにその点に私は引かれた。
 それは私にとって、非常に魅力的であり、訴える力が強いものだった。

 物語は、すべて作者が構想し、創り上げる世界だ。でも生みの親には、登場人物たちが自ら動き出し、話が展開していくように感じられるのだろう。そんな瞬間があれば最高だと、知人の作家に聞いた。イシグロ氏の言葉に、そんな創作家の頭の中を垣間見ることができたような幸運を感じる。

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1987668 0 ちょい読み英語 2021/04/17 09:00:00 2021/04/17 09:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210415-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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