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    映画

    「モヒカン故郷に帰る」 (東京テアトルなど)

    日本のリアルな家族像

     地元志向が強く、そこでの人間関係を大事にする人々を、向上心に欠けるという意味合いも込めて、「マイルドヤンキー」というらしい。その言葉には、都会のエリートの上から目線が感じられ、あまりいい気はしない。

     ここで描かれる家族像は、それに近いように思える。モヒカン頭のバンドマン(松田龍平=写真右)が、妊娠した恋人(前田敦子=同左)を連れて、広島にある故郷の島へ、結婚を報告するために帰ってくる。父親(柄本明)は郷土のロックスター・矢沢永吉の、母親(もたいまさこ)は広島カープの熱狂的なファン。地元愛は強烈だ。モヒカン頭と恋人には、ガツガツした向上心はない。2人は家族に結婚を祝ってもらうが、父親が倒れ、末期がんだと診断される。

     親の死と、自身の結婚。どこにでもある家族の話が、瀬戸内海の美しい風景とともに、まったりと、ユーモラスに展開する。彼らの暮らしぶりは洗練とは無縁で、むしろみっともないが、愛情と共感をたっぷりと込めて描かれ、温かい笑いになっている。そして、死も結婚も、すべてを日常として受け入れてしまうようなゆるぎなさに、心を打たれる。

     監督・脚本は「横道世之介」の沖田修一。彼の目線は登場人物たちに寄り添い、マイルドヤンキーなどという分類への批判にもなっている。どうレッテルを貼ろうが、これが大部分を占める我々普通の生活者、日本の今のリアルな家族像だと思う。2時間5分。テアトル新宿など。(小梶勝男)

    2016年04月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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