女性が生き生き、巨匠2監督の作品

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 リゾート地のリド島にあるベネチア国際映画祭の会場は、街のにぎやかさとも無縁の、のんびりした場所です。木陰で昼寝をしている人もいます。テロ警戒のため、地元警察による荷物チェックもありますが、本気度は高くはありません。それでも、腰の拳銃や肩から下げた銃を見ると、心が少しざわつきます。

 開幕式も終わった30日、いよいよ本格的に映画祭が始まりました。注目作を世界に先駆けて見られるというのが、映画祭の醍醐味(だいごみ)です。その中で、今回紹介したいのはアルフォンソ・キュアロン監督「ROMA」と、ヨルゴス・ランティモス監督「THE FAVOURITE」。どちらも女性が生き生きと描かれていることが印象的でした。

「ROMA」 Asac - la Biennale di Venezia.
「ROMA」 Asac - la Biennale di Venezia.

 「ROMA」は、同じキュアロン作品でも、宇宙空間をリアルに、スピードたっぷりに描いた「ゼロ・グラビティ」とは異なり、流れる時間はゆるやかです。

 舞台は1970年代のメキシコ市。住み込みの家政婦クレオと、中流一家の暮らしが描かれます。白黒の画面はドキュメンタリーを見ているようでもあり、どこか懐かしい雰囲気も漂います。実際、監督自身の半自伝的な内容だそうです。

 子供たちに献身的に尽くすクレオでしたが、妊娠し、恋人に捨てられます。悲しい運命を静かに受けとめる彼女が、ラスト近く、一家の子供たちを助けるため命がけの行動に出る。その様子を、キュアロンは長回しで撮ります。大事なものを守りたいという必死な気持ちが伝わってくる、力強い場面でした。

 細かい点で面白かったのは、父親と母親の性格の違いを、自動車の扱いで表現していたこと。狭い駐車場に入れるのに父親は何度も切り返し、壁とぶつからないようにする。一方の母親は、ぶつかっても気にしない。道路を走っていても、車と車の間に強引に割り込み、両側をこすってもへっちゃら。豪快さに、思わず笑ってしまいました。

「THE FAVOURITE」Asac - la Biennale di Venezia.
「THE FAVOURITE」Asac - la Biennale di Venezia.

 ギリシャ出身のランティモス監督は、「ロブスター」などで不思議な世界観を表現してきました。「THE FAVOURITE」は一転、18世紀初頭の英国、アン女王の治世を描いた時代劇です。女王と腹心のサラ、さらに女官のアビゲイルとの“三角関係”が、濃密にスリリングに描かれます。

 したたかに、のし上がっていくアビゲイルを、エマ・ストーンが巧みに演じます。サラ役のレイチェル・ワイズとの激しいつばぜり合いが、見ていてゾクゾクしました。ただ私が一番引かれたのは、アン女王を演じたオリヴィア・コールマン。女王の弱さを表現し、存在感を発揮しています。

 この映画、美術や照明が素晴らしい。すきのない画面構成で、豪華な宮殿の様子を再現しました。夜になると、燭台(しょくだい)のあかりが人物を浮かび上がらせます。陰影の深い映像に魅了されました。見応えのある1本です。(文化部 大木隆士)

38803 0 エンタメ・文化 2018/08/31 13:30:00 2018/08/31 13:30:00 2018/08/31 13:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180831-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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