エコノミークラス症候群、原因と症状と対策
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西日本豪雨では、多くの被災者が避難所での生活や車中泊を余儀なくされている。注意したいのが、「エコノミークラス症候群」。足の静脈にできた血栓(血の塊)が移動して肺で詰まる病気で、命に関わるケースもある。水分を十分に摂取し、足をマッサージするなどの対策が必要だ。
■なぜ起きる?
足の筋肉は、心臓に次ぐ「第二のポンプ」と言われる。足を動かしている時は、筋肉が伸び縮みすることで血管に圧力が加わり、心臓へと戻る血の流れを後押ししている。
車中泊をすると、足を下ろしたままの姿勢が長く続き、ポンプの働きが弱まる。その結果、血液が下半身にたまり、太ももからふくらはぎの血管に血栓ができやすくなる。
血栓が血流に乗って移動し、心臓から肺に入る肺動脈に詰まることで、体に重篤な影響をもたらす。
■症状は?
太もも付近にできる血栓は、足の血管を詰まらせることがある。この場合、足に腫れや痛みが出る。症状は、片足のみに出る場合が多い。
ふくらはぎ付近にできる血栓は、血管を詰まらせず浮遊している場合がある。この状態では足の症状はほとんどないが、血栓が肺の血管に移動して詰まると、突然、呼吸困難による息切れ、胸の痛み、冷や汗などの症状が出て、意識を失うことや死亡することがある。
激しい胸の痛みや呼吸困難などは、たとえ他の病気であっても命に関わる場合が多く、迷わず救急車を呼ぼう。
■どう治す?
エコノミークラス症候群の疑いのある患者には肺や足のコンピューター断層撮影法(CT)検査、心臓の超音波検査、血液検査を行い、詰まっている血管の場所や血栓の大きさ、症状の重さを判断する。
軽症の場合、血液を固まりにくくする薬を使うのが基本だ。注射と飲み薬があり、併用する場合もある。
命に関わるような重い症状の場合には、血栓を溶かす注射を使ったり、外科手術で直接血栓を取り除いたりする。血栓の状態や、患者の年齢、体力、他の病気の有無などで最適なものを選ぶ。
■予防するには?
血栓ができにくい状態を保つため、水分を十分に摂取することが大切だ。ただ、利尿作用のあるお茶やアルコール類は脱水症状を招く恐れがあり、逆効果となる。
災害時の避難所では、トイレに行く回数を減らすため、水分の摂取を控える人がいるが、これも発症の危険性を高める恐れがある。避難所の管理者は、トイレを常に清潔な状態に保つことが求められる。
一般的に、狭い場所で足を動かさない姿勢を6時間以上保つと、血栓ができやすくなるとされている。足首を回したり、ふくらはぎをもんだりする運動を、1~2時間おきに行い、血流を改善するとよい。血流を促進する弾性ストッキングの着用も効果がある。(松田俊輔)