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    野生キノコ出荷規制、山梨で今も…原発事故7年

     東京電力福島第一原子力発電所の事故以来、山梨県富士吉田市と富士河口湖町、鳴沢村で採れた野生キノコの出荷規制が続いている。

     キノコから検出される放射性物質の値が食品衛生法の基準を上回っているためで、「ショウゲンジ」など特定のキノコで値が高い。郷土料理のほうとうに欠かせない食材のため、規制解除を望む声が上がっているが、事故から間もなく7年となる現在でも、その時期は見通せないままだ。

     「地元ではショウゲンジを『シロンポ』って呼ぶんだ。ほうとうに入れて煮込むとねっとりした食感でおいしいよ」――。鳴沢村などの恩賜林を管理する鳴沢・富士河口湖恩賜県有財産保護組合(鳴沢恩組)の担当者は、地元で好んで食べられているショウゲンジの魅力を強調した。

     鳴沢恩組は毎秋、恩賜林にキノコ狩りに来る人に「入山鑑札料」(一般2000円、組合員1000円)の支払いを求めていた。2012年10月、3市町村で採れたキノコから食品衛生法の基準(1キロ当たり100ベクレル)を上回る放射性物質が検出されたため、県は3市町村のキノコの採取や出荷をしないように通知した。鳴沢恩組は13年度以降、東京電力から年約340万円の賠償金を受け取り、恩賜林の保全などに充てている。

     幹線道路沿いの直売所がキノコを売る風景は秋の風物詩だったが、今では見られなくなった。

     鳴沢恩組の担当者は「キノコは地元の名物なので、早く規制が解除されて観光客にも食べてほしい」と話している。

         ◇

     県は原発事故後、県内で流通する野菜などに含まれる放射性物質を検査しているが、食品衛生法の基準を超えたのは3市町村で採れたショウゲンジなどのキノコだけだ。17年度は15市町村で検査を行い、17年11月までに基準を超えたのは3市町村のキノコだけ。ほかの地域のキノコからは、検査機器で測定できない値か、検出されても基準値を下回る値しか出ていない。基準を超えるキノコが採れる地域が3市町村に限られている原因について、県林業振興課の担当者は「風向きが影響しているのではないか」と、風で飛来する放射性物質が3市町村に落ちやすいのではないかと推測する。

     また、3市町村で栽培された野菜や米などからは基準を超える放射性物質は検出されておらず、なぜキノコからだけ検出されるのかも不明のままだ。

     県森林総合研究所(富士川町)の戸沢一宏主任研究員は、「周りの県と比較して、山梨県の放射性物質の量が多いとは思えない」とした上で、「放射性物質を取り込みやすいキノコがあるのではないか」と指摘する。3市町村で採取しても、ショウゲンジのように高い値を示すキノコと、基準値を下回る値しか出ないキノコがあるという。

         ◇

     採取や出荷の制限対象が、ショウゲンジなどの特定のキノコだけではなく、全てのキノコとなっているのは、「キノコ狩りをする一般の人がキノコの種類を区別するのは困難」(県林業振興課)という理由からだ。

     特定のキノコの規制解除を国に申請するためには、3年間の検査が必要で、最初の2年間は1市町村当たり5か所以上でそのキノコを原則5本採取し、放射性物質が基準値の半分以下ということを確認。3年目は地域が偏らないようにしながらそのキノコを60本採取して、放射性物質が基準値の半分以下ということを確認することが条件になる。同課の担当者は「広大な恩賜林でそれだけの検体のキノコを集めるのは困難だ」と話しており、規制解除の見通しは立っていない。(福島憲佑)

    2018年03月12日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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