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    事故7年後の高速代助成「復興に逆行」疑問視も

    • 基金の設置条例案が可決された本会議。右端は門馬市長(6月27日、南相馬市議会で)
      基金の設置条例案が可決された本会議。右端は門馬市長(6月27日、南相馬市議会で)

     福島県南相馬市は、東京電力福島第一原発の30キロ圏外に住む鹿島区民を対象に、高速道路の通行料を独自に助成する。小高区、原町区の住民は国の無料化措置が受けられるが、最北の鹿島区は一部地域を除いて適用されていない。門馬和夫市長は「市民の一体化につながる」と意義を強調するものの、原発事故から7年が過ぎて新たな助成が導入されることに、「復興に逆行する」「新たな分断を招く」と疑問視する声もある。

     6月27日、南相馬市議会定例会の本会議。「市民一体化復興促進基金」と銘打った基金の設置条例案が、賛成15、反対5で可決された。今年度分の助成金など1億1738万円を盛り込んだ、一般会計補正予算案の財源となるものだ。市の一般財源6億4000万円と、国から県を通じて交付された3億8000万円が投じられる。

     助成の対象は原発事故当時、30キロ圏外に自宅があった鹿島区民約7400人。今年10月から2年間、1人あたり上限10万円の通行料が無料になる。ネクスコ東日本によると、被災自治体で住民の高速通行料金を独自に助成するのは初めてという。

     通行料の助成は、今年1月に初当選した門馬市長の公約の一つ。原発事故後、国は、帰還困難区域などの住民が避難先と自宅とを往復することを想定し、高速道路の無料化を実施しているが、鹿島区の大部分は対象外だった。市長は6月8日の記者会見で「事故直後、市は全市民に避難を呼びかけた。30キロの線引きにとらわれず、市民全体が対象となるべきだ」と助成の正当性を主張した。

     しかし、採決前の討論では異論が相次いだ。渡部一夫議員は「助成を受けない人の理解を得なければ、新たな不満を生む。一体化につながらない」と指摘。小川尚一議員も「一部の地区に市の財源を充当すれば、かえって対立をあおることになる」と訴えた。

     そもそも、被災者への支援措置は高速料金だけではない。固定資産税や国民健康保険の負担も、避難指示の種類などによって異なる。本会議では「高速道路を無料化したところで不公平感はなくならない」との意見も出た。

     市の財源を投じることに疑念を呈する声もある。地方自治総合研究所の今井あきら・主任研究員(自治体政策)は「本来は国や東電が負担するのが筋だ」と指摘する。

     住民側の反応も複雑だ。鹿島区の行政区長会長、加藤栄伸さん(68)は「これで一体感が出る」と歓迎する。一方、全域に避難指示が出た小高区の行政区長連合会長、林勝典さん(71)は「市民同士で対立してもしょうがない。ただ、避難指示が出た地域の生活は不自由も多く、『不公平感の解消』という言葉には違和感がある」と語る。

     「復興」とは本来、公的助成が必要なくなり、自立した暮らしに戻ることだともいえる。自主避難者の住宅支援が昨春から打ち切られるなど、県内では被災者の自立に向けた動きが本格化している。

     都路町地区が避難指示区域となった田村市の担当者は、「除染も終わり、住民が元の暮らしに戻ろうとしている。今になって無料化措置を始めるのは、復興の歩みにやや逆行しているように感じる」と話している。(松尾彩花)

    2018年07月01日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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