塀の中のおばあさん(2)一品盗ると気持ちがさっぱり

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窃盗に至った理由や生い立ちなどを語る高齢の受刑者(岐阜県笠松町の笠松刑務所で、写真は一部加工しています)
窃盗に至った理由や生い立ちなどを語る高齢の受刑者(岐阜県笠松町の笠松刑務所で、写真は一部加工しています)

 70歳代のB子さん。常習累犯窃盗罪で服役中で、刑務所に入るのは7回目。小柄でおとなしそうな様子からは、とてもそうは見えない。

 ここでのお務めは2年近くになります。スーパーでトマトやきゅうりなど100円ほどを盗みました。

 2度目の亭主が酒乱で。飲んでいない時は腕のいい職人。孫が来ている時はいいだんなさん。でも私と2人の時は殴る、蹴るを繰り返す。アザだらけにされた腹いせというわけでもないんだけど、カッとなり、ひょっとっちゃいました。自分でもばかだと思うけど、一品盗るとふうっとなって、気持ちがさっぱりしちゃって。

 最初に盗んだのは50歳前。以来、やらないように、やらないようにと努力していたんですが。盗るのは野菜やお菓子など。サッとじゃなくて、キョロキョロしながらだからすぐ捕まっちゃう。

 生まれは関東です。中学を出てすぐ働き始め、20歳過ぎに結婚しました。でも、相手の家の都合で子どもを置いて離婚させられて。2度目の結婚は30歳過ぎ。そこでも子どもができました。みんないい子。ただ、子どもに亭主のことを相談したら「お母さんが悪い」って。ああ、何もかも私が悪いんだなと。それから、何か諦めてしまいました。

 亭主とは別れました。出所したら1人で暮らします。子どもや嫁さんに迷惑をかけられないから。でも最近、便所は間に合わないし、頭もだめ。この先どうなるのかよくわからない(涙ぐむ)。

 約370人が暮らす笠松刑務所では、身体医療上の配慮も精神医療上の配慮も要らない人は3割弱しかいない。認知症と診断された人は5人。B子さんもその1人だ。

 ここ? 私にはもったいないほどいい人ばかり。介護の人もいてありがたい。盗みはこれきりにします。

続く

 (文・猪熊律子、写真・山岸直子)

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303502 0 密着Document 2019/01/22 15:00:00 2019/01/31 10:28:10 2019/01/31 10:28:10 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190122-OYT8I50086-T.jpg?type=thumbnail

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