塀の中のおばあさん(3)いつしか黒いカラスが寄りつき…

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刑務所には1人部屋、相部屋がある。就寝前、テレビを見る受刑者たち(岐阜県笠松町の笠松刑務所で、写真は一部加工しています)
刑務所には1人部屋、相部屋がある。就寝前、テレビを見る受刑者たち(岐阜県笠松町の笠松刑務所で、写真は一部加工しています)

 80歳代のC子さんの話。

 盗んだのはデコポンと立派なりんごです。大雪で食料が消えたので。その後、コンビニでも、牛乳とレトルトのカレーを盗みました。情けないもんで、1人だと手がかかる料理はできない。それらが一番、便利なので。

 C子さんには過去、罰金刑も。刑務所はこれで2回目。

 以前、出所した時は、生涯忘れないほどの感謝の気持ちで帰りました。それを忘れてはならんと思っていましたが、知り合いがまた刑務所に入ったのを新聞で見て、その気持ちを忘れてしまった。

 若い頃は飲食関係の商売をしていました。それが、いつしか黒いカラスが寄りつき、飛び交うようになって。黒いカラス? 悪者です。開業を任せた人にだまされ、店も家も失いました。実印がものをいった。夫は勤め人でした。もう亡くなりました。子供とは、生活が貧しくなってから行き来はありません。

 盗みをしたのは甘えですかね。あんなひどい目にあったんだから、私もこれぐらいは許されるんじゃないかと。多少なりとも、得したという気持ちもあったと思います。

 ここでの暮らし? ものすごくうれしい。今まで独り住まいだったから。先生もとても優しいし。大きな声で言われても、心が伝わってくる。

 受刑者は刑務官のことを「先生」と呼ぶ。先生たちによると、所内は人間関係が濃く、社会で孤独な受刑者は刑務所の方が過ごしやすいと戻ってきてしまいがちという。

 自分は劣等感の塊。だからか、ここでみなさんを見ていると、本当に楽しそうで、独りでいるよりなんか楽しくなってくる。もちろん、共同生活は難しいと思うところもありますが、教えられることが多く、感謝しています。でも、人に迷惑をかけたことは間違いない。もう二度としないと思ってます。

続く

 (文・猪熊律子、写真・山岸直子)

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303503 0 密着Document 2019/01/23 15:00:00 2019/01/31 20:21:05 2019/01/31 20:21:05 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190124-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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