フェイクニュース汚染、欧州の危機感

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始まったフェイクニュース対策

 こうした状況に対し、ドイツでは調査報道を手がける非営利団体Correct!v(コレクティブ)がフェイスブックと協力し、「フェイクニュース退治」に乗り出した。Correct!vは、慈善団体として登録されており、メンバーの会費、Correct!v利用者らの募金で運営されている。

 読者がネット上でうそと思われるニュースを発見した場合、まずCorrect!vに報告する。ここで働くのは政治的に中立の立場のジャーナリストらで、彼らがそのニュースの真偽を判定する。うそと判明した場合、当該記事の見出しの下には「真偽に問題」と表記され、ユーザーがこの記事を共有しようとすると、警告が発せられる。

 一方、ドイツ司法省は、フェイスブックでフェイクニュースを配信した人に最高50万ユーロの罰金を科す法律の制定を検討中だ。

対策、フランスでも

「ファースト・ドラフト・ニュース」の「CrossCheck」プロジェクトのページ(ウェブサイトより)
「ファースト・ドラフト・ニュース」の「CrossCheck」プロジェクトのページ(ウェブサイトより)

 フランスでは、大統領選に特化したCrossCheck(クロスチェック)というプロジェクトが2月28日に始まった。ネット上のニュースの質向上を目指す非営利団体「ファースト・ドラフト・ニュース」が中心となって始めたもので、バズフィード、AFP通信など34のニュースメディアや学生らが参加している。

 ファースト・ドラフト・ニュースはグーグル、ソーシャルメディアの検証を行う「ストーリーフル」、調査報道サイト「ベリングキャット」などからの資金提供で運営されている。

 使い方はこうだ。読者が大統領選関係の情報を載せたウェブサイトやソーシャルメディア上の静止画、動画、コメント、引用、主張などに疑問を感じた場合、CrossCheckに質問を送る。匿名での質問も可能だ。

 これがプロジェクトのサイトや提携するメディアのサイトに掲載され、各メディアが検証を開始する。AFP通信が検証結果を最終的に確認した後、CrossCheckのウェブサイトに報告書を掲載する。報告書の内容はフェイスブックやツイッターを通じて拡散される。

 3月2日、反移民を掲げる極右「国民戦線」の党首で、フランス大統領選の有力候補でもあるマリーヌ・ルペン氏が「マクロン氏の選挙資金はサウジアラビアが出している」というニュース記事をツイートした。「イスラム教の国家がマクロン氏の背後にいる、だから危険だ」というイメージを植えつけたいという意図が強くにじむツイートだ。

 ツイートはベルギーのフランス語新聞「ル・ソワール」の記事を紹介しているかのような体裁だったが、CrossCheckによって、本物のル・ソワールの記事ではなかったことが突き止められた。記事のURLを見ると、本物なら「lesoir.be」となるが、ツイートされた記事の方は「lesoir.info」となっていたからだ。

 10月に総選挙を控えるチェコでは、フェイクニュースの拡大を止めるため、内務省の中に対策室を設置している。反移民のニュースを発信するウェブサイトが増えており、フェイクニュースの疑いがある場合は、政府の特設サイトで真偽を確認し、専用のツイッターアカウントでも情報を流すという。

 ネット上であなたが目にしている情報は果たしてうそか本当か……国境のないサイバー空間では偽情報を拡散して目的を果たそうとする勢力と、それを防ごうとする勢力の間で、一種の「戦争」のような状態がすでに始まっている。

 

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プロフィル
小林 恭子( こばやし・ぎんこ
 秋田県生まれ。成城大学卒業後、外資系金融機関勤務、英字紙「デイリー・ヨミウリ」(現「Japan News」)の記者を経て、2002年、渡英。フリーランスのジャーナリストとして、政治やメディアについての記事を各種媒体に寄稿中。著書に『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)など。共訳書にボリス・ジョンソン著『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)
『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)

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無断転載禁止
432294 0 深読み 2017/03/09 16:21:00 2017/03/09 16:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170308-OYT8I50080-T.jpg?type=thumbnail

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