がん新薬の「実力」 効果を最大限高める方法とは

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苦難の歴史たどった肺がん治療薬

 実のところ肺がんに効く薬は、かつてはほとんどなかった。一部の抗がん剤(化学療法剤という)が有効であることが分かったのは、1990年代になってからだ。しかし、それでも延命効果は1~2か月にとどまった。苦しい副作用に耐えながら治療を受けても、余命はわずかに延びるに過ぎなかった。

 専門医の間でも、「こうした治療にどれくらい意味があるのか?」という懐疑的な意見があった。がん治療に疑問を投げかけた近藤誠医師の著書「患者よ、がんと闘うな」(96年刊)がベストセラーになったのは、まさにそうした時代だった。

 この状況に変化をもたらしたのが、英アストラゼネカ社が開発し、2002年に日本国内で承認された肺がん治療薬「イレッサ」(成分名・ゲフィチニブ)だった。

 イレッサは、がん細胞に特有な分子構造をターゲットにして開発された薬で、「分子標的薬」と呼ばれる。がんをピンポイントで狙い撃ちできることから、治療の効果が高く、副作用の少ない「夢の新薬」と、鳴り物入りの登場だった。

「イレッサ」(ゲフィチニブ)による副作用問題を報じる2002年12月19日の読売新聞夕刊 ※クリックすると拡大します
「イレッサ」(ゲフィチニブ)による副作用問題を報じる2002年12月19日の読売新聞夕刊 ※クリックすると拡大します

 だが、イレッサをめぐっては、これを服用した患者が重い肺炎の副作用で死亡する例が相次ぎ、大きな社会問題となった。飲み薬だったことから、抗がん剤治療の経験のない医師や歯科医までが処方するなど、安易に使われたことが背景にあった。

 さらにイレッサは、海外の臨床試験で「延命効果が認められなかった」とする研究結果が04年に公表された。このため、ヨーロッパや米国での承認申請が取り下げられるなど、一時は厳しい評価にさらされた。

 その後、イレッサは、上皮成長因子受容体(EGFR)と呼ばれる特定の遺伝子変異がある患者に限定して使用すると、効果が高いことが判明した。10年に公表された、EGFR遺伝子に変異のある患者を対象にした国内の臨床試験によると、従来の治療で1年余りだった患者の生存期間(中央値)が、イレッサを使用した患者は2年余りとなった。生存期間が約2倍に延びた格好だ。

 この結果、日本ではイレッサは再び広く使われるようになった。「どのような患者に使えば効果があるか?」について、事前に調べられるようになったことにより、一時は社会問題になった薬が復活したわけだ。同様の分子標的薬は、その後も次々に承認されている。

 イレッサなどの分子標的薬は、服用した薬の力でがんの分子構造を直接狙い撃ちにする「外からの剣」だ。これに対し、次世代の薬とされるオプジーボなどの免疫チェックポイント阻害薬は、体に備わった免疫力を高めてがんを攻撃する「内からの剣」と言えるだろう。

 がん研究会有明病院の西尾誠人・呼吸器内科部長は「イレッサは、肺がん治療の第1のパラダイムシフト(概念や価値観の転換)になった。オプジーボは第2のパラダイムシフトになる」と期待する。

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