がん新薬の「実力」 効果を最大限高める方法とは

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「夢の新薬」にはほど遠い?

肺腺がんに対するニボルマブ(オプジーボ)の効果を表すグラフ(※勝俣範之・日本医科大学教授提供)
肺腺がんに対するニボルマブ(オプジーボ)の効果を表すグラフ(※勝俣範之・日本医科大学教授提供)

 それでは、オプジーボの実際の効果はどれほどのものだろうか?

 肺がんのうち、腺がんと呼ばれる種類の患者を対象にした臨床試験では、患者の生存期間(中央値)は、従来の治療を受けた場合に9.4か月だったのに対し、オプジーボは12.2か月だった。延命効果は認められたが、余命が延びた期間は3か月足らずに過ぎなかった。

 治療対象になった患者が異なり、単純な比較はできないものの、薬としての「実力」では、約2倍の延命効果をもたらしたイレッサに及ばない。しかも、オプジーボが効く患者の割合は、肺がん患者全体の2割程度にとどまる。また、ここで言う「薬が効く」というのは、一時的にがんが小さくなることを指し、「がんが治る」ことを意味しない。

 このため、「オプジーボは『夢の新薬』というにはほど遠い」(勝俣範之・日本医科大学武蔵小杉病院教授)のが実情だ。いくらかの延命効果がもたらされたとはいえ、薬でがんを治せる状況になったわけではない。

 そのうえ、オプジーボは価格がべらぼうに高いことが問題になった。

 日本国内での薬剤費は発売当初、1人当たり年間約3500万円と、英国の5倍、米国の2.5倍に上る設定だった。患者数が少ない皮膚がん対象の薬として、世界に先駆けて承認された経緯があり、高額な薬価が認められたのだ。だが、あまりに高価であることが批判されたため、政府が2年に1度の薬価改定を待たず、今年2月から急きょ半額(約1700万円)に引き下げたことは大きなニュースになった。

 半額に引き下げられたとはいえ、オプジーボの薬剤費はイレッサ(年間薬剤費約240万円)の約7倍だ。効果からすると、まだ法外な値段と言えるのではないか。今年2月に発売されたキイトルーダも1年間の薬剤費は約1400万円で、オプジーボと同じような水準だ。

 副作用にも注意が必要だ。免疫は、過剰に働くと正常細胞も攻撃する。このため、オプジーボの投与を続けると、間質性肺炎、重症筋無力症、大腸炎など自己免疫疾患に似た副作用が現れる場合がある。

 オプジーボには、もう一つ大きな問題がある。それは、どのような患者に薬が効くか、事前に判定する方法がないことだ。

 分子標的薬であるイレッサは、事前に効果がありそうな患者を選び出すことによって有効性を高め、治療薬としての位置づけを確立した。オプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダは、がん細胞の表面にある特定の分子(PD―L1)に変異がある場合に使用すると、延命効果があることが示されている。オプジーボも、研究者たちが効果予測の判定方法を懸命に探しているが、いまだに研究途上だ。

なおも大きい「オプジーボ」への期待

 それでも、オプジーボなど免疫チェックポイント阻害薬に期待する声は高い。それは、薬の寿命と密接な関係がある。

 従来の抗がん剤は、使っているうちに効かなくなる場合が多い。これは、イレッサなど分子標的薬も例外ではない。

「オプジーボ」(免疫チェックポイント阻害薬)の仕組み
「オプジーボ」(免疫チェックポイント阻害薬)の仕組み

 薬はがん細胞と結合することによって効果を表す。だが、がんには、抗がん剤の攻撃をかわす巧妙な仕組みが備わっている。イレッサなどの分子標的薬を使い続けると、がん細胞の表面に薬が結合できなくなるような変化が起きて耐性化し、薬が効かなくなるのだ。イレッサの場合、耐性ができて薬が効かなくなるまでの期間は、約1年と言われている。

 これに対して、オプジーボに代表される免疫チェックポイント阻害薬は、効き目が長続きする傾向がある。一部の患者では治療が終了してからも、がんの進行が見られないことがあるという。がんを攻撃する免疫という人体に備わった仕組みが増強されるからだと考えられている。「がんに対する“体質”が強化される」とも言える。

 がんの治療では、分子標的薬などの効き目が切れることを念頭に置き、「どの薬を使って、どういう順番でつないでいくか?」という薬の投手リレーが重視される。その意味で、効果が長期間継続して、ロング・リリーフを任せられる可能性がある免疫チェックポイント阻害薬の登場は、専門医にとって心強い。

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