実は、潔癖性が「キレイ好き」じゃすまない危険

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多くは“隠れ強迫症”

 強迫症は、10~20代にかけて発症し、ゆっくり進行していきます。

 受験、職場での衛生教育、結婚や出産、責任を伴う地位への昇進など、症状が現れるのは何らかのきっかけがあります。業務上、清潔さが求められる医療や食品衛生管理、生産ラインでの検査業務に従事している場合、職業病のように症状が現れることもよくあります。

 手洗いを繰り返したり、同じことを何度も確認したりするのが典型例ですが、これらの行為は自宅や個室、トイレなどの限られた場所で行われることがほとんどです。そのため、強迫症はうつ病や統合失調症、パニック症などに比べ、一般にあまりなじみがないのです。

 むしろ、他人の目からは、整理整頓をきちんとしていたり、清潔で几帳面(きちょうめん)だったりするため、職場ではミスをしない真面目人間として評価されることのほうが多いようです。

 発病する割合は、およそ100人に2、3人と言われています。統合失調症やパニック症よりも多いのですが、ほとんどの患者が他人に知られていない“隠れ強迫症”を抱えたまま日々過ごしているのです。

 では、どこからが病気と考えられるのでしょう?

どこから病気か?

 これに答える前に、まず、こちらから一つ質問をさせてください。

 みなさんは大便の後にお尻を紙で拭きますね。そのときに使う紙の長さは、どれくらいでしょうか? 

 私が勤めている、「なごやメンタルクリニック」(名古屋市中村区)では、毎月、行動療法をグループで3日間、集中して行うという集団集中治療プログラムを実施しています。

 ある月に参加した患者さんたちに、普段使っている紙の長さを比べてもらいました。

 その結果、約30センチという人から、3メートルも使うという人までいました。しかも、3メートル使うという人は、これを10回繰り返し、トイレットペーパー1ロールが1日でなくなってしまうそうです。

 この中で、誰が潔癖性と思われますか?

紙が短くても「潔癖性」

 答えは、左から数えて、1番目の30センチ、2番目の1メートル、3番目の2メートル、6番目の3メートルの人でした。

 ほかの4人は、何度も確認しなくては落ち着かない「確認強迫」や、バチが当たらないように細心の注意を払う「縁起恐怖」といった潔癖以外の強迫症でした。

 使用する紙の長い人が潔癖性だというのは自明でしょう。しかし、30センチしか使わない人が潔癖性だったというのは、私にとっても意外でした。

 この人は、「後で石鹸(せっけん)をつかってしっかり落とすから、もし、手についてしまっても気にならない」と理由を説明していました。

 左から5番目の女性も1.5メートルと長めではありますが、潔癖性ではなく、「加害恐怖」でした。彼女は、「自分がトイレを使った後に、他の人に迷惑をかけたくない。跡を残したくない」という理由で、お尻ではなく、自分が使った便座を拭くために使用する紙が多くなるとのことでした。

 紙の長さだけで、病気かどうか、潔癖性か強迫症かを区別できればどんなに簡単でしょう。しかし、新患だけで年間300人を診ている専門家の私であっても、患者さんの話を細かく聞かなければ、実は分類ができないのです。

 それでも、潔癖性による強迫症かどうか、一応の目安になるものはあります。

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