“SNS地獄”で疲れ切った中国人

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濃密な親族関係ゆえのストレス

中国人の間で“SNS疲れ”が広がっている(写真はイメージです)
中国人の間で“SNS疲れ”が広がっている(写真はイメージです)

 徐さんや郭さんのように“SNS地獄”から抜け出せなくなり、精神的疲労がピークに達している中国人は少なくない。

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 日本にも同様の中毒患者は大勢いるので「何も中国だけの話ではないでしょう?」と思われるかもしれない。また、「中国人は特殊な人々かと思っていたけれど、日本人と何も変わらないね」とホッとする人もいるかもしれない。

 しかし、あえて中国の特徴を挙げるとすると、家族・親戚との関係が日本よりもずっと濃密で、それがさらに彼ら(とくに若者)のストレスをためる原因になっているという点だ。

 徐さんの同僚、毛悦さん(26歳)は河南省の農村の出身だ。両親や親戚は河南省の田舎町から一度も都会に出たことがない。上海の大学を卒業してキャリアウーマンとなった毛さんは自慢の娘だが、家族は上海の事情がよくわからないため、毛さんの投稿にいちいち変なコメントを残すという。

 「いいね」同様、コメントも「共通の友人」にしか見えないため、幸い会社の同僚たちにはバレないが、田舎の家族からのトンチンカンなリアクションにうんざりしてしまう。

 家族や親戚からはSNSを通じてお見合いの話も頻繁に持ち込まれ、無視したいのが本音だが、「さすがに親がかわいそうなので、そこまではできないかな……」と毛さん。SNSによって、大都会の上海で暮らす娘の事情がわかるのは親にとってうれしいことだが、娘のほうはSNSでつながることで逆に憂鬱なことが増えた。

競争の舞台、SNS上に

 上海の地下鉄に乗ってみると、車両にいる乗客の8割くらいが一心不乱にスマホをいじっている。まるで何かにとりつかれたかのようだ。

 むろん、SNSだけではなく、ゲームやドラマ視聴、ネットショッピングなどをやっている人もいる。そこには「誰かとつながっていたい」、あるいは「誰かとつながっている誰かの行動をチェックしたい」「情報に乗り遅れたら大変」といった心理が見て取れる。

 人口が多く、国土があまりにも広い中国では、かつては鉄道チケットの入手などをはじめ、あらゆる面における争奪戦や競争が、日本人の想像をはるかに超えるほど激しかった。それが人々を疲弊させてきたが、今ではそれらのほとんどはSNS上に移行している。

 ネットですべてが完了する世界では、すべてが簡単で素早く、シンプルになったかのように思えたはずだ。だが、よいことがある反面、そうでないことも多い。SNSの発達によって、中国社会はますます複雑になってきたといえる。

プロフィル
中島 恵(なかじま・けい)
 1967年、山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、96年からフリージャーナリスト。市井に暮らす中国人の生活に密着したていねいな取材には定評がある。著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの (とりこ) になるのか?』(中公新書ラクレ)のほか、新刊に『中国人エリートは日本をめざす なぜ東大は中国人だらけなのか?』(同)がある。

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431031 0 深読み 2017/05/16 05:20:00 2017/05/16 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170510-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

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