救える命を救えない…臓器移植法20年の現実

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 脳死での臓器提供に扉を開いた「臓器移植法」が1997年に施行されてから今年で20年を迎える。ただ、臓器提供者数は長い間低迷が続き、2010年の法改正で子どもからの提供も認められるようになったものの、移植に命を託す患者や家族の願いに十分にはこたえられていない。読売新聞調査研究本部の坂上博主任研究員が、臓器移植の現状と課題を探る。

臓器移植めぐる苦難の歴史

 臓器移植とは、病気やけがで心臓や肝臓など臓器の働きが悪くなり、投薬などによる治療効果も十分に期待できない患者が、最後に望みを託す治療法だ。臓器提供者(ドナー)から供与された臓器を患者に移植し、機能が低下した臓器を代行させることで、病状の回復を目指す。

 亡くなった人から臓器を提供してもらう方法には二つある。

 一つは、心臓が止まった後に臓器提供する「心停止後の臓器提供」だ。ただし、心臓が止まると全身に血液が流れなくなるため、供給できる血液が不足する状態(虚血)に弱い心臓や肝臓などは移植できない。心停止後に提供できる臓器は主に腎臓だ。

 もう一つの方法が、「脳死での臓器提供」だ。脳死とは、病気やけがなどが原因で脳に酸素が流れなくなるなどして、脳の機能が失われた状態のことを指す。自発的な呼吸はできず、人工呼吸器によって心臓や肺などがやっと機能しているため、呼吸器を外すと心停止になる。医学的には脳死と判定されると、回復することはないとされる。脳死段階で臓器を提供することで、心停止後では不可能な心臓移植などが可能となる。

 しかし、脳死での臓器提供をめぐっては、移植医療そのものに対する不信を招く事態が起き、日本での臓器移植が停滞した歴史がある。

 札幌医科大学の和田寿郎教授(当時)のチームが1968年、国内初の心臓移植手術を行った。海水浴場でおぼれた大学生(当時21歳)を脳死と判定し、提供された心臓を少年(同18歳)に移植したとされたが、少年は手術後に死亡した。その後、ドナーは本当に脳死状態だったのか、少年は真に移植を必要としていたのか――など様々な疑問点が指摘された。この「和田移植」をきっかけに臓器移植のハードルが高くなり、30年以上、脳死移植が行われない空白期間が生まれた。

臓器移植法施行後、初めて行われた心臓移植(1999年)=大阪大学病院提供
臓器移植法施行後、初めて行われた心臓移植(1999年)=大阪大学病院提供

 和田移植の反省も踏まえて、脳死での臓器提供などについて定めた臓器移植法が施行されたのは、97年10月16日だった。同法は、ドナーを15歳以上に限定し、生前、臓器提供の意思を署名入りの書面に残すことを義務づけ、家族の承認も求める規定も盛り込んだ。結果的に、「世界で最も厳しい法律」とも揶揄(やゆ)される制度の導入となり、臓器提供は年間10件程度にとどまった。

 圧倒的なドナー不足という事態の解消を目指し、2010年7月17日、改正臓器移植法が全面施行された。改正のポイントは、(1)本人の臓器提供意思が不明でも家族の承諾だけで脳死での提供が認められる(2)これまで臓器提供ができなかった15歳未満でも可能となった――の2点だ。これにより、脳死での臓器提供者数は増加し、16年は64人と法改正前の約6倍増えた。ただ、課題が解決されたわけでは決してない。

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