30年目の「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(上)

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ノーベル賞の威信、その源泉は

 東京・帝国ホテルで開会式が行われたのは1988年11月7日だった。レセプションには皇太子ご夫妻(現天皇皇后両陛下)をお迎えし、竹下登首相をゲストに招いた。

 開会式翌日からの名古屋セッションではノーベル財団のラルス・ユレンステン理事長が記念スピーチを行った。

 ノーベル賞は世界で一番注目を集め、特に自然科学では最も権威ある賞とされている。ユレンステン理事長のスピーチからは、そのゆえんがうかがい知れる。

 「ノーベル財団はアルフレッド・ノーベルの遺言に沿って(遺産の)運用を行い、授賞式をとり行う責任を負っています。ノーベル機構においては財団が中枢をなしていますが、(賞の)実際の決定、または候補者の選定や評価をめぐる具体的な仕事などには、財団は一切関与していません。ノーベル賞の威信は多額の賞金(2016年で800万スウェーデン・クローナ=約9500万円)だけではありません。決定的なことは授賞に先立つ事前の調査・評価の質が高いということにあるのです。賞を授ける機関は、いかなる政府や権威からも独立した存在です。賞の推薦や選考過程のいかなる段階に関しても詳しい情報は50年後になるまで門外不出です」

 物理学賞と化学賞、経済学賞の選考はスウェーデン王立科学アカデミーが、生理学・医学賞はカロリンスカ研究所が、文学賞はスウェーデン・アカデミーが行う。また、平和賞はノルウェー国会が選んだ委員の組織が選考する。これら選考機関は、ノーベル賞受賞者や世界的な権威のある専門家から候補者の推薦を受ける。特に自然科学3賞では、「誰が最初にオリジナルな発見・発明をしたのか」という点を徹底的に調べ尽くす選考作業が知られている。世界史上初めての本格的な国際賞という価値に加え、秘密性の保持、独創性の重視などの点が、ノーベル賞の権威を高めている。

 ユレンステン理事長はスピーチの最後に、日本に向けてこのようなメッセージも投げかけた。

 「欧米以外の国としては日本が最大数の受賞国です。今後日本が研究及び国際協力に投資する意向を持ち、必要な支援を提供し続けていけば、ノーベル賞受賞者の名簿に日本人が名誉ある地位を占める日がくるでしょう」

 科学分野で、その後、日本が急速にステップアップしていく状況を見通していたかのような言葉だった。

 名古屋セッションでは、初日に、チェンニン・ヤン博士(1957年物理学賞)、ジョージ・ポーター卿(1967年化学賞)、スネ・ベルイストレム博士(1982年生理学・医学賞)の自然科学3賞受賞者が講演した。

 2日目は小説「蠅の王」で知られるウィリアム・ゴールディング卿(1983年文学賞)、アドルフォ・ペレス・エスキベル教授(1980年平和賞)、ジェームズ・ブキャナン博士(1986年経済学賞)の3氏が登壇した。名古屋に引き続き石川県での金沢フォーラムは2か所同時(金沢工業大学と金沢市立北鳴中学校)に開催した。

フォーラムの変遷

 スタートから現在までを俯瞰(ふかん)すると、フォーラム30年の歩みは大きく4期に分けることが出来る。

 草創期は原則としてノーベル賞の6賞から受賞者を一人は招聘(しょうへい)する華やかなイベントという色彩が強かった。記念すべき第1回の名古屋セッションで学術顧問会議座長の江崎博士は、フォーラム開催の意義について「日本人がノーベルカルチャー(ノーベル文化)というものに触れることができること」を挙げている。自然科学、文学、経済学、そして平和活動の各分野の最高の知性が語り合う場は、日本人には実際、知的刺激に満ちた体験だった。スタートから90年代初頭までをフォーラムの第1期と考えたい。続く第2期は、ゴルバチョフ氏をはじめ平和賞を受賞した世界的に著名な政治家や平和運動家を次々と招聘した90年代中盤~後半としたい。

 21世紀に入ると、自然科学系で日本人の受賞ラッシュが始まる。2000~02年の3年連続で計4人の日本人が受賞する快挙に国中がわいた。フォーラムも新しい日本人受賞者たちの言葉に耳を傾ける場になりさらに活気を帯びた。これが第3期だ。そして2010年以降、フォーラムは、「受賞者が若い世代にメッセージを届ける」というコンセプトを明確に打ち出す。以来、現在までを第4期とすることができるだろう。

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430527 0 深読み 2017/06/05 05:20:00 2019/02/06 16:44:47 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170602-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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