30年目の「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(上)

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平和賞セッション、著名人が続々

 1992年までは、ノーベル財団の特別協力を得て運営されていたフォーラムは、バブル崩壊の影響で、企業からの協賛金が思うように集まらず、「6賞6人の招聘」が財政上厳しくなる。1993年、フォーラムは「6賞6人」を堅持したいとするノーベル財団と特別協力の関係を解消、名称を「ノーベル賞受賞者日本フォーラム」から「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム 21世紀への創造」と変更した。

 第2期にあたる90年代半ば以降は、平和賞を受賞者した著名人によるセッションが目立つ。元ソ連大統領のゴルバチョフ氏の招聘は、95年に実現した。講演の中でゴルバチョフ氏は「我々は時代からの挑戦を受けている。過渡期から真の平和の時代に向かうため、冷戦終結という今のチャンスを失ってはいけない。より良き時代を築くことは後世に対する我々の責務だ」と語り、平和をつくりだすことの大切さを力強く訴えた。

 96年には、ポーランドの自主管理労組「連帯」議長を務めたレフ・ワレサ前同国大統領(83年平和賞)が登壇した。ワレサ氏は「日本は能力ある指導者に率いられ、美しく素晴らしい世界をつくる能力を備え、国際的な指導力もある。しかし、これは責任を自覚しなければならないということでもある。21世紀へ向けて何をやるべきか考えてほしい」と訴えた。97年はイスラエルのシモン・ペレス前首相(94年平和賞)を招待した。

 この時期の平和賞セッションは、東西冷戦の終結や中東の緊張緩和といった国際情勢の変化に対応していた。日本人受賞者がまだ少ない当時、フォーラムは、平和に尽力した受賞者の生の声を通して冷戦後の世界の在り方を考える場として、他に類を見ない存在感を示した。

科学フォーラム、日本人によるフォーラム

 2000年以降、フォーラムはタイトルを「21世紀への創造」から「21世紀の創造」に変えた。さらに日本人受賞者の増加が、フォーラムの内容にも変化を及ぼし始めた。ここからが第3期にあたる。

 フォーラムに登壇する日本人受賞者が自然科学系の江崎博士、利根川博士、福井博士(98年死去)と作家大江健三郎氏(94年文学賞)に限られていた時代には、各賞の外国人受賞者を招待することは、フォーラムを新味のあるイベントとして継続するうえで必須だった。それが2000年以降、科学分野での日本人の受賞が相次ぐことで、日本人受賞者に次々と登壇してもらうようになり、科学セッションが増えていった。

 01年10月、ノーベル賞100周年記念フォーラムを東京で開催した。大江氏、江崎博士のほか、白川英樹・筑波大学名誉教授(2000年化学賞)が待望久しい日本人の新たな受賞者として登壇した。前の月にアメリカで起きた同時テロの影響で、帰国を見合わせざるを得なかった利根川博士も、ビデオメッセージを寄せた。

 新たな日本人受賞者が生まれ、市民と科学との関係を改めて考える時代になってきた。大江氏はパネルディスカッションの中で次のように述べている。「科学者は(我々を)先導し、助言してくれる人と考えたい。それを健康に受け止め、時には批判する市民になるべきだと思う」

次世代にメッセージを届ける

 第4期の2010年、フォーラムはタイトルを「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム 次世代へのメッセージ」に変更した。様々な世代の人たちに未来を考える場をフォーラムは提供してきたが、特に近年は、高校生を中心とした若い世代にメッセージを発信する場になりつつある。当初の基本理念でも、若い世代への呼びかけを積極的に行うとしていたが、若者との対話を多くの日本人受賞者が望んでいることも大きく作用している。

 10~16年に24回のセッションを実施し、平和賞セッション(15年)は1回。他の23回はすべて科学セッションで、しかもそのうち22回に日本人受賞者が登壇し、次世代に対して熱いメッセージを送った。

プロフィル
佐藤 良明( さとう・よしあき
 読売新聞調査研究本部主任研究員。専門分野は生命科学、医療。科学部次長を経て現職。iPS細胞、ヒトゲノムなど最先端の生命科学や、脳死移植、新型インフルエンザといった医療の分野を中心に取材してきた。「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」と「読売テクノ・フォーラム」を担当している。

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