30年目の 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(中)

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日本人受賞の背景は

 文部科学省、ノーベル財団の資料に基づく国別の受賞者数(自然科学系)の推移をみると、1901年~2000年は、米国が195人なのに対し、欧州の主要3国は英国が68人、ドイツが63人、フランスが25人となっている。同じ時期の日本の受賞者は6人だ。これを2001~16年でみると、米国59人、英国10人、フランス7人、ドイツ6人となる。日本は16人にのぼり、米国に次ぐ受賞者数を誇っていた欧州3国を上回っている。文科省科学技術・学術政策研究所の赤池伸一・科学技術予測センター長は、日本の科学がレベルを上げ、キャッチアップ型から独創性にあふれる研究へシフトしてきたことを、この数字は示唆していると指摘する。頭ひとつ抜けている米国はともかく、科学の主導権は欧州から日本に移ってきている。

 その背景には、科学研究に対する支援体制の充実があった点も指摘しておきたい。国民総生産(GNP)に占める研究開発費の割合を国際比較すると、1970年度には1.80%まで上昇してフランス(1・88%)との差を縮めた。主要国が伸び悩む中、日本は72年度にフランスを上回ったのを手始めに、83年度に英国、87年度に米国、89年度にドイツを超えて、世界最高水準となった。

 では、日本人の受賞ラッシュを支えてきた研究開発費は具体的にはどのように研究者の手元にとどけられてきたのだろうか。

 ノーベル賞の芽ともいえる「どう発展するかわからない」基礎研究は、出口戦略を立てられず企業の資金援助は得にくい。このため、その研究を育み、花開いた場は主に国立大学である。国立大学では、1999年までは積算校費と呼ばれるシステムがあり、現場からのボトムアップで基盤的な日常経費を積算し、予算が決められていた。若手研究者の研究資金もこれで賄われていた。積算校費は石油危機や財政改革など時流の影響を受けながらも全体としては右肩上がりで、2000年代に法人化の波が押し寄せるまでは、基礎研究を底支えしてきた。こうした国費の支援で脈々と続けられてきた研究の中から独創的な成果も生まれてきたと言える。

 2016年版科学技術白書では、「ノーベル賞受賞を生み出した背景~これからも我が国からノーベル賞受賞者を輩出するために~」という特集を組み、自然科学系で2000~15年に受賞した16人を調査し、どのようにして受賞に至ったのか30ページ余りにわたり分析を試みている。

山中伸弥氏
山中伸弥氏

 日本人受賞者の業績はいつごろの研究成果なのだろうか。2000~16年の日本人受賞者でみると、60年代の成果が2人、70年代が6人、80年代が5人、90年以降が4人となっている。平均では受賞まで27・8年(2000~15年の日本人受賞者)だった。おおむね30年ほど前のの研究成果で受賞していることを考えれば、当時の研究開発費の伸びが、日本の研究環境を世界レベルに整えてきたと言えそうだ。

 自然科学3賞で受賞対象になった研究成果をあげた年齢はどうだったのか。白書によると、1940年代以降の全受賞者の平均で37.1歳。多くは20代から40代前半までに業績をあげている。2000~15年の日本人受賞者16人の平均は40・1歳だった。

 受賞までの年数は、1940年代以降で、全受賞者の平均で22・0年。1950年代は15・1年だったが、時代を追って延びる傾向にあり、2010年代には29・2年になっている。賞の対象となる研究業績が増えてきたことが要因として挙げられる。それでも、山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所長(12年生理学・医学賞)のようにマウスiPS細胞作製の論文発表から6年後のスピード受賞もある。

<合わせて読みたい>
・30年目の「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(上)
・「ソメイヨシノ」はどこからやって来たのか
・日本人は独創的―大隅さんノーベル賞単独受賞の訳
・日本のAIは周回遅れ…杉山将・東京大教授に聞く

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