30年目の 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(中)

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受賞者の言葉を聞く

江崎玲於奈氏
江崎玲於奈氏

 次々に誕生する日本人受賞者には国内外から講演依頼が殺到する。鈴木章・北海道大学名誉教授(10年化学賞)は、受賞後の約1年で講演のため8回も海外渡航した、とフォーラムに登壇した際(11年)に語っている。受賞ラッシュは日本の科学への注目度を高め、結果的に日本の科学の発信力を高めている。フォーラムもそうした発信の一翼を担ってきた。

 本フォーラムは地方開催も活発で、会場は北海道から宮崎県まで全国26都道府県にのぼっている。当初は、大型セッション以外に「一般講演会」、少人数の「ワークショップ」、泊まりがけの「創造キャンプ」など複数のイベント形式があった。また、30人程度の高校生に受賞者が語りかける「高校生講座」も実施したことがある。

 ノーベル賞受賞者が社会に果たす役割を考えた時に、自らの経験や信念を言葉で伝え、次世代の若者に刺激を与えて人材育成につなげる一方、基礎科学への理解を国民に深めてもらうことが重要な使命だと思える。

 こうした受賞者からの発信と対話は、欧州に先進的な取り組みがある。ドイツ南部の保養地リンダウで毎年開催される「リンダウ・ノーベル賞受賞者会議」は、地元の医師の発案をもとに1951年から始まり60年以上の歴史がある。年ごとに物理、化学など自然科学3賞と経済学賞でテーマを決め、約30人の受賞者が集う年もある。世界各国の大学院生と1週間ほど泊まり込んで、講演したり討論したりする本格的なイベントだ。

 「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」も日本で受賞者と社会との橋渡しをしてきた。近年は、日本学術振興会が同様の対話集会を始めた。科学技術NPOが主宰する「科学技術と人類の未来を考える国際フォーラム」(STSフォーラム)は毎年10月、京都で開催されている。ノーベル財団傘下のノーベル・メディア社も、12月10日の授賞式に前後するノーベル賞ウィークに、公式行事の一つとして、「ノーベル・ウィーク・ダイアログ」を創設した。受賞者と学生・市民が語り合う機会は少しずつ広がりをみせている。

 過去のフォーラムでは受賞者が心に響く数多くのメッセージを発信してきた。その一部を紹介しよう。

大村智氏
大村智氏

 鈴木北大名誉教授は、「資源のない日本が生き残るには、他の国にはない付加価値の高いものを作っていかなければならない。そのために科学や技術を発展させなければならない」(11年10月東京セッションで)と語った。

 大村智・北里大学特別栄誉教授(15年生理学・医学賞)は、先人からのメッセージだとして「失敗を恐れるよりも、挑戦しないでチャンスを逃すことのほうを恐れなさい」(16年7月東京セッションで)という言葉を贈った。

 山中博士は若い世代に「留学先の指導者からV&W(ビジョン&ハードワーク)の重要性を教わった」と語りかけた。高い目標をしっかり定めて、一生懸命に努力することをさしている。さらに「頑張れば必ず成功するほど甘くはないが、一生懸命努力すれば必ず成長につながる」(16年9月東大セッションで)と励ましの言葉も贈った。


プロフィル
佐藤 良明(さとう・よしあき)
 読売新聞調査研究本部主任研究員。専門分野は生命科学、医療。科学部次長を経て現職。iPS細胞、ヒトゲノムなど最先端の生命科学や、脳死移植、新型インフルエンザといった医療の分野を中心に取材してきた。「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」と「読売テクノ・フォーラム」を担当している。

<合わせて読みたい>
・30年目の「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」(上)
・「ソメイヨシノ」はどこからやって来たのか
・日本人は独創的―大隅さんノーベル賞単独受賞の訳
・日本のAIは周回遅れ…杉山将・東京大教授に聞く

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