ビジネスに通じる「プレゼン術」は一流科学者に学べ

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画家の話から開始…「脱線」のテクニックを活用

生命科学と芸術の話題を巧みに交差させる福岡伸一さん
生命科学と芸術の話題を巧みに交差させる福岡伸一さん

 プレゼンに注目させる工夫という点では、青山学院大学教授で分子生物学者の福岡伸一さんにも注目したい。キーワードは「脱線」だ。科学の説明ばかり、ストレートな説明だと息がつまりがちだ。たまに脱線してもらった方が聞きやすい。

 福岡さんは講演でしばしば「動的平衡」という生命科学の仮説を説明する。だが、科学をテーマにしたはずの講演は、なぜか17世紀オランダを代表する画家フェルメールをめぐる話で始まることが多い。福岡さんは、「光の画家」と呼ばれるフェルメールに魅了されてやまないことを公言しているが、絵画の名作の話がいつの間にか生命の不思議の話になり、最後にはまた絵画の話に切り替わるのだ。

 福岡さんの講演は脱線で始まり、脱線で終わる。ちなみに、福岡さんの著書『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)も、08年に新書大賞を受賞している。先に紹介した村山さんと同様、講演・論述の両面でプレゼンの達人だと言える。

科学ネタ以外の「変化球」も投げる坂口志文さん
科学ネタ以外の「変化球」も投げる坂口志文さん

 ノーベル生理学・医学賞の有力候補で、免疫細胞を研究している大阪大学特任教授の坂口志文(しもん)さんも、脱線のテクニックを活用する。坂口さんは、今年2月に東京で行った講演の途中で、18、19世紀に活躍したフランス印象派の画家ルノワールの話を始めた。晩年に自己免疫疾患のリウマチを患ったルノワールは、変形した手の指に筆を巻き付けて描き続けたという。老画家の執念を感じさせる画像を映し出したスライドに、多くの聴講者が身を乗り出して見入っていた。

奇抜な服装で登場、事前に資料は配布せず

 次に、プレゼンのスタイルや内容に「意外性」を高め、プレゼンに対する聞き手の関心を高める工夫をしている科学者を紹介しよう。

イタリア高級ブランドのジャケットで講演する鎌田浩毅さん
イタリア高級ブランドのジャケットで講演する鎌田浩毅さん

 巨大地震や火山噴火を研究する京都大学教授の鎌田浩毅(ひろき)さんの講義は学生にたいへん人気があり、毎年、同大の理系教養科目で最も履修者が多いという。鎌田さんは、マグマの色をイメージした赤いジャケットや和服など奇抜な服装で講義や講演を行っている。16年4月に東京で開かれた講演会には、イタリアの高級ブランドのジャケット姿で現れた。スライドを一切用いないという型破りな講演で、女性アシスタントとやりとりしながら、会場との質疑応答を中心に話を進めていた。すべて聞き手の関心をつなぎとめるために鎌田さん自身が考えた意外性重視のやり方だという。

 鎌田さんは、スライドを使わない講演で存在感を発揮したが、仮に使用したとしても、印刷して手元の資料として配布しないというのも一つのテクニックだ。

話題が予想外に広がる高井研さん
話題が予想外に広がる高井研さん

 科学の世界でも、講演会やプレゼンでは、講師が使うスライドをあらかじめ印刷して配布しておくのが普通だ。しかし、海洋研究開発機構上席研究員の高井研さんは、「ネタバレになる」と言って、事前に資料を配布しないことをポリシーとしている。

 高井さんが大切にしたいと考えているのは、意外性あふれる展開に導かれたことで聴衆が覚える感動だ。次にどんなスライドが出るのかと期待させ、良い意味で聞き手の期待を裏切り続けるのが、プレゼンを成功させる秘訣(ひけつ)の一つだという。地球生命の起源探究をテーマにした高井さんの講演は、深海の奥底に向けた視点が、いつしか地球を飛び出し、土星の衛星までダイナミックに移りゆく。まさに予想外の広がりを見せる。

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