加藤一二三という生き方(上)盤上の激闘

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谷川さんの強気な部分、肯定しています

「老練さ」が持ち味の谷川浩司九段
「老練さ」が持ち味の谷川浩司九段

 天下を取った者は追われる立場になる。83年の名人戦は21歳の谷川浩司八段(当時)が挑戦者となった。

 「私の記憶に間違いがなければ、名人戦が始まる前に谷川さんは勝つ自信があると言いました。将棋の世界では『精一杯戦います』というのが普通で、『勝つ自信がある』と言う人はほとんどいません。谷川さんは臆せず、強気なところが特徴で、私はそれを全て肯定しています」。盤上では先輩も後輩もない、というのが加藤九段の考え方である。

 このシリーズ、谷川八段の勢いに押される展開が目立った。3連敗の後、2勝を返したものの、第6局で敗れ、谷川新名人の誕生となった。

 名人戦以降も両者はよく顔を合わせた。加藤九段は谷川流の振り飛車(飛車を左側の筋に移動させ、相手の攻めを迎え撃つ戦法)にも度々痛い目に遭っている。「谷川さんの将棋は老練でね。大山先生と指した時も老練とは感じませんでしたから、一体どこで身につけたのかと思いました」

 時は流れ、近年、イベントの席上対局などで加藤・谷川戦が組まれることがあるが、ここでも谷川流の「光速の寄せ」(最高速度で相手の玉を仕留めること)にしてやられることが多い。

 加藤九段は語る。「谷川さんとの席上対局は1回勝っただけであとは全敗です。途中まではこちらがいいのに、谷川さんは最後の寄せが速い。あれだけうまく負かされたら私も悔しい。でも、その手は時間があれば気付かない手ではありません。負かされたのは残り時間が切迫していたからです」。やはり負けたくはないのだ。

羽生さんは非公式戦でも手を抜かない

どんな将棋でも手を抜かず、研究の一手をぶつけてくる羽生善治三冠
どんな将棋でも手を抜かず、研究の一手をぶつけてくる羽生善治三冠

 90年代から今に至るまで、将棋界の第一人者といえば羽生善治三冠である。羽生三冠は「天才」と言われることが多いが、加藤九段の見方はちょっと違う。

 「羽生さんはよく研究しています。私が別の棋士と戦った将棋を研究し、創意工夫を加える余地がある時は私にぶつけ、その余地がない時はぶつけてきません。升田先生、大山先生は、そんなに膨大な研究をする棋士ではありませんでした。森内九段、郷田真隆九段、佐藤康光九段とも指しましたが、研究の裏付けがあって向かってきているなと感じたのは羽生さんだけでした」

 2013年にはこんなことがあった。達人戦という非公式戦の準決勝で加藤九段が羽生三冠と戦った時のことだ。羽生三冠は加藤九段の得意な矢倉戦法で挑んできた。

 「その前後、私は達人戦ぐらいしか対局がありませんでしたが、羽生さんは非常に対局も多く、多忙だったはずです。ところが、私の得意戦法に対してじっくりした指し方を選んできました。対局が多いからと言って研究をはしょらず、羽生さんは非公式戦であっても勝ちたいのだと思いました」。どんな将棋でも全力を尽くす。この姿勢は加藤九段も同じだ。

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