炎上と延焼を繰り返すネットCMの舞台裏

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自治体PRに炎上スレスレはタブー

(画像はイメージ)
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 ちょうど昨年あたりから、国の地方創生予算をPR動画に使う地方自治体が増えました。すると、多くの自治体がPR動画のアイデアを募る企画コンペを実施するようになりました。

 自治体がPR動画に求める成果は、「再生回数を得ること」に尽きます。結果が分かりやすい数字で示されるので、予算を求める際、国への実績アピールにも使いやすいのです。前述したように、自治体のPR動画は過去にも成功例があるゆえ、新たに取り組む自治体は当然、広告代理店に「それ以上」を求めます。

 自治体のこうした要求によって、企業と同じように、社会的に許容範囲スレスレの表現で再生回数をアップさせる「劇薬」が、自治体にも提案されるようになりました。

 議論になっている宮城県のPR動画は、県や市町村、JR東日本仙台支社などでつくる観光推進協議会が今夏実施している観光キャンペーンです。壇蜜さんが伊達家家臣の末裔(まつえい)という設定で、ずんだや牛タンなどの名物を紹介します。壇蜜さんの唇のアップとともに、「宮城、行っちゃう」など扇動的なセリフが織り込まれ、性的ともとれる演出が見られます。

風評被害をまき散らす

 この動画はSNSで炎上し、奥山恵美子・仙台市長は定例会見で「やや配慮に欠ける部分があった」と苦言を述べました。

 一方、宮城県の村井嘉浩知事は「賛否両論あったことは逆に成功につながっているんじゃないか」と反響の大きさを強調しました。

 県には「品がない」「性的な表現は不愉快」などの苦情が100件ほど寄せられています。また、県議会の全女性議員も7月21日、県に対し動画の配信見直しを求める申し入れを行いました。

 制作された動画は、作品としては完成度が高いと思います。だからこそ自治体も納得したのでしょう。しかし、大切なことが見逃されています。「観光キャンペーン」は、地域そのものをアピールするという点です。

 炎上スレスレを狙った大企業のネットCMはいずれも「商品CM」で、「企業PR」ではありません。企業ブランドを維持することを大前提に、商品別にターゲットを考慮して制作されたものです。

 しかし、自治体の観光キャンペーンは、地域そのものをアピールしなければなりません。「劇薬」を用いたことで地域そのもののイメージが損なわれ、再生回数が増えるほど風評被害をまき散らすことになりかねません。

 もちろん、地方自治体でもマーケティングを理解してうまく活用しているところもあります。大分県別府市はPR動画をきっかけに「温泉テーマパーク」を観光の目玉として期間限定でオープンします。この展開は、地域ブランドを傷つけず、効果的な“商品PR”となるでしょう。

 地域には長い歴史と文化が積み重なっています。それを守り育むはずの自治体が、動画の再生回数に目がくらんで、自ら風評被害を拡散しないよう気を付けてほしいものです。

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プロフィル
殿村 美樹( とのむら・みき
 PRプロデューサー。京都府宇治市生まれ。TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「うどん県」(香川県)など地方のPR戦略を手がけてきた。「今年の漢字」もプロデュース。主な著書は「テレビが飛びつくPR」(ダイヤモンド社)、「ブームをつくる」(集英社新書)など。

「ブームをつくる」(集英社新書)
「ブームをつくる」(集英社新書)

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