20××年、自動車からエンジンがなくなる日

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消費者の意識改革

(画像はイメージ)
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 イギリスが離脱はしたものの欧州連合(EU)域内は、2021年から自動車メーカー平均値でCO2の排出量を、走行距離1キロメートル当たり95グラム以下の新車しか販売することができないようになっている。これに対応するには、メーカー平均値として、ヨーロッパ走行モードで燃料1リットル当たり30キロメートルの燃費性能が求められる。

 このため、新車販売は少なくともハイブリッド車以上である必要があり、また、車両重量の大きい高級・高性能車であれば、プラグインハイブリッド車か電気自動車でなければ、この数値を達成することは難しい。

 ドイツのフォルクスワーゲンは、25年までに30モデルの電気自動車を販売するとし、その目標台数を100万台と計画している。スポーツカーのポルシェでさえ、すでにパナメーラやカイエンにプラグインハイブリッド車を設けており、ミッションEと呼ばれる電気自動車を販売することも公表している。

 もはや、新車の電動化は不可逆的な状況となっており、ボルボが発表した「19年にすべての新車を電動化する」との声明も自然な流れと言える。

 もちろん、米国や中国という世界最大規模の自動車市場においても、ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)やNEV(ニュー・エネルギー・ビークル)規制が強化される方向にある。まさに、電動化への道筋は世界の潮流である。

 ヨーロッパにおいても、いまさら声明や宣言をしなくても、規制等で自動車の電動化には道筋が引かれている。しかし、それらは机上の計画でもある。そして、電動化された新車を生産さえすれば、問題が解決するわけではなく、それを消費者が購入しなければ効果は生まれない。

 消費者が電動車を不便だと感じれば、既存のエンジン車に乗り続け、保有するエンジン車を手放すのをためらい、買い替えを先延ばしする懸念もある。

 その間に大気汚染はますます進行していく。では、どうすべきなのか?

 規制の実施前に、消費者に電動化された新車に関心を持ってもらい、一日も早く乗り換えてもらうしか大気汚染を改善する方法はないのである。

 すなわち消費者の意識改革が不可欠だ。

マンションで充電ができない

 それは、日本も同様だ。電気自動車の販売が想定より伸び悩んでいる理由は、単に一回の充電で走行できる距離が短いという理由だけではない。

 例えば、トヨタが販売するプラグインハイブリッド車は、充電した電力を使い果たしても、エンジンを使うハイブリッド車としてそのまま走行し続けることができる。にもかかわらず、ハイブリッド車の新型プリウスが月間平均販売台数1万5000台以上なのに対し、プラグインハイブリッド車のプリウスPHVは同約4000台にとどまっている。

 ハイブリッド車よりプラグインハイブリッド車のほうが高価ということもあるだろうが、販売台数が限られる理由の一つに、マンションなど集合住宅での200ボルトの普通充電の設置がなかなか進まないという事情がある。

 電気自動車やプラグインハイブリッド車を購入したいと思う住民が、駐車場に充電コンセントを設置したいと申し出ても、管理組合で反対意見があると、それはできない。

 「自分はクルマに乗らないから関係ない」「理由はともかく、お金がかかるなら反対」などの意見があり、設置を断念した例もあると聞く。

 こうなると、新しい社会基盤(インフラ)への理解が進まなければ、電動化された新車を買いたくても多くの集合住宅の住民は電動車を所有できないことになる。

 ヨーロッパでは、路上駐車が違法ではなく一般的だ。そのため、充電設備に関しても、急速充電と200ボルトの普通充電のプラグが別になる日本のCHAdeMO(チャデモ)式ではなく、急速充電と普通充電を一つのプラグで利用できるコンボ式が望まれている。

 環境に優しいとされる電動化された新車が普及するためには、こうした社会基盤を整備するための機運を盛り上げる準備が必要だ。税金を投入するケースもあるだろうし、施設整備に住民の協力が必要なこともあるだろう。高性能な電気自動車が相次いで各社から投入されたとしても、それだけで10~20年後に突然、社会が様変わりするというわけにはならない。

 都市部の大気汚染に注目してきたが、もちろん、地球温暖化への対策も忘れることはできない。

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