20××年、自動車からエンジンがなくなる日

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無視できない電源構成

(画像はイメージ)
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 各国の電力事情を改めて確認してみると、フランスは80%近く(2014年、電気事業連合会。以下同)を原子力に頼っている。したがって、クルマが電動化されれば、ゼロエミッション社会の先頭に立つと言ってもいい。

 イギリスは、原子力への依存が20%ほどで、約60%が火力だが、そのうち30%は石炭火力である。ちなみに、現在ほとんどの原子力発電を止めている日本は、火力発電に85.5%も依存しており、これは、中国の74.8%を上回る。このうち、石炭火力はイギリスを上回る33.7%に達する。

 火力発電のうち、石炭のCO2排出量は石油や天然ガスより多いことが知られている。その石炭火力に72.6%を依存する中国は、原子力発電への転換を急いでおり、国内に400基の原子力発電を整備する計画がある。

 中国は、アメリカと関係性を持ちながら、第4世代の新しい原子力発電の開発を急いでおり、この夏から秋には準備を整え、年内にも実証実験の発電を開始するという。この第4世代の最新原子力発電は、既存のウラン/プルトニウムを核燃料とする軽水炉型に比べて安全性が高く、またプルトニウムを含む高濃度放射性廃棄物を処理できる能力を備えるトリウム溶融塩炉という方式も含まれる。すなわち、いわゆる「トイレの無いマンション」ではなく、トイレ付きマンションで発電する能力を備える。

 もちろん、太陽光や風力などゼロエミッション発電への取り組みを推進する必要はあるが、それらは立地や効率の点で電力を十分に供給する状況に至っていない。ドイツは、30%近く再生可能エネルギーを利用しているというが、一方で、石炭火力に45.8%も頼っている。また、原子力発電を止めるとは言っているが、現状なお15.6%は依存している。

時間的猶予は何年もない

 19世紀末に16億人だった世界人口が4.5倍の72億となった今日、世界の人々が十分な食料と飲み水、そして活動に不可欠なエネルギーを享受し、なおかつ気候変動を抑えるためCO2の排出を削減するには、各国国民の十分な現状把握と理解が必要なのである。

 広く理解を促すには、政府の「声明」や「宣言」が必要であり、それが効果を伴うには数十年の歳月がかかることもある。

 パリ協定は、15年12月に採択され、16年11月に発効した。産業革命前に比べ世界の気温上昇を2度未満に抑制するという目標を掲げる。すべての国が削減目標を作り、対策を取る必要がある。トランプ大統領は今年6月、中国などに有利な内容で「不公平」として、協定離脱を表明した。

 目標達成のため世界のCO2排出量をゼロに近づける時間的猶予は、実はあと何年もない。今のまま経済活動を続けてCO2を排出し続ければ、気候変動の抑えが効かなくなる恐れがある。

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プロフィル
御堀 直嗣( みほり・なおつぐ
 1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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