徴用工も蒸し返す、韓国人の歴史観とは

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「戦略的利害を共有する」日韓関係に向けて

今年7月、ドイツで開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせて開かれた日韓首脳会談。日韓の間には多くの難題が横たわっている
今年7月、ドイツで開かれた主要20か国・地域(G20)首脳会議に合わせて開かれた日韓首脳会談。日韓の間には多くの難題が横たわっている

 文政権の対日政策は、歴史問題とその他の分野における協力を切り分ける「2トラック路線」と言われる。

 慰安婦合意について文氏は、選挙期間中は「再交渉」を掲げていたが、大統領に就任してからは、「国民の大多数が感情的には受け入れられていない」としつつも、政府としては交渉過程や合意内容、それに和解・癒やし財団の事業を検証するタスクフォースを設置することで、立場をあいまいにしたまま、年内は時間稼ぎすることにした。

 このアプローチは、安倍政権による河野談話の検証をモデルにしたところがある。「右派」の安倍政権だからこそ、支持層の不満を懐柔しつつ、河野談話やアジア女性基金などを「総体として継承」できた。同様に、「左派」の文在寅政権だからこそ、左派の批判が特に大きい慰安婦合意の意義を、不承不承であったとしても、再確認しやすい側面がある。

 「左派」だから「反日」、「修正主義者」に違いないと決めつけると、日本から働きかける余地を自ら閉ざしてしまうことになりかねない。

 その意味で、徴用工問題について、韓国政府が本当に従前の立場を覆したのかは慎重に見極めた方がいい。文大統領の発言は、就任後初めて臨んだ記者会見において応答要領がない中でアドリブによるものであり、政府を挙げて事前に十分に詰めた立場が公式に示されたわけではない。

 一国のリーダーが国家間合意を反故(ほご)にするというのは本来、相手国との信頼関係だけでなく、その国の信用にもかかわる重大な決定で、それなりの形式も求められる。今回の発言はあまりに軽く、真意がつかみにくい。

 日本政府としては性急に動いて事を大きくするのではなく、まずは外交ルートで申し入れをしつつ、不穏な動きにはクギを刺すのがいい。

 ただ、明らかなのは、たとえ韓国政府が徴用工問題に関して従前の立場を堅持するとしても、日本側の懸念に対する扱いがこれほどまでに「雑」なところを見ると、それだけ日韓関係を独立変数としては重要視していないということである。

 さらに、大法院に再上告されている徴用工の裁判で、日本企業に賠償が命じられる判決がそのまま確定すると、韓国政府の立場がどうであれ、日韓関係は取り返しがつかないくらい悪化することは必至である。たとえそうなったとしても、日韓が「戦略的利害を共有する」ならば、北朝鮮の脅威に関する安保協力だけは抜かりなく進めるしかない。

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プロフィル
浅羽 祐樹(あさば・ゆうき)
 新潟県立大学大学院国際地域学研究科教授。北韓大学院大学校(韓国) 招聘(しょうへい) 教授。早稲田大学韓国学研究所招聘研究員。1976年、大阪府生まれ。立命館大学国際関係学部卒業。ソウル大学大学院修了(政治学博士)。専門は、比較政治学・国際関係論。著書に『徹底検証 韓国論の通説・俗説』(中公新書ラクレ、共著)などがある。今年5月に最新刊『だまされないための「韓国」 あの国を理解する「困難」と「重み」』(講談社ビーシー、共著)を出版した。

だまされないための「韓国」(講談社ビーシー)
だまされないための「韓国」(講談社ビーシー)

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429083 0 深読み 2017/08/25 13:57:00 2017/08/25 13:57:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20170825-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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