8Kテレビは「目の付け所がシャープ」?
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シャープが今年10月に中国で、12月に日本で世界初の「8K放送」対応テレビ「アクオス8K」を発売する。高精細な4K対応テレビの4倍の画素数(3300万画素)を持ち、月産台数は世界で200台、日本での想定販売価格は税抜きで100万円前後となる。しかし、NHKのBS実用放送は2018年末から。中国では予定されてもいない。なぜこのタイミングで「8Kテレビ」を売り出すのか。事情を探った。

8月末に東京都内で開かれたシャープの8Kテレビの発表会。同社で8K関連事業を担当する西山博一・取締役は「国産第1号はラジオもテレビもシャープ製だった。小型液晶テレビもシャープが最初。そして今度は世界初の8K対応テレビも発売する」と胸を張った。
シャープは2015年に85インチ(縦約106センチ、横約188センチ)の8Kモニターを発売し、すでにNHKの放送局などに供給していた。また、今年6月には70インチ(縦約87センチ、横約155センチ)のBtoB(業務用)の8Kモニターを700万円前後で売り出したばかりだ。しかし、今回の家庭用テレビは70インチで税抜き100万円前後。予想を大きく下回る価格設定で「各所にすごい衝撃が走った」(業界関係者)という。シャープはその後、18年3月末までに国内で1000台の販売を目指す方針も明らかにしている。
政府が示したロードマップでは、NHKの8K・BS実用放送、NHKと民放各局の4K・BS実用放送はともに18年末に開始を予定している。つまり現時点では8Kどころか4Kの実用放送さえ始まっておらず、1年以上先の話だ。シャープが売り出す8Kテレビにも、現行のフルHD(2K放送)のチューナーしか搭載していない。実は、各メーカーが販売している4Kテレビも、未発売の専用チューナーを接続しないと4Kの放送は見られないのだ。規格などがまだ明確に定まっていないことなどから、チューナーの発売はいずれも実用放送の開始に合わせる形になる見通しだ。
現時点では、8Kのコンテンツはほぼ世の中には出回っていない。4Kコンテンツもまだ少なく、インターネット配信のほか、放送はCSやケーブルテレビなどでしか行われていない。また、NHKが計画している8KのBS放送は電波方式が従来のBS放送とは異なるため、アンテナの買い替えも必要となる。
このように、コンテンツの供給が見込みにくい中で8Kテレビをどう使うのか。西山氏は「2Kも4Kもアップコンバート(8Kに変換すること)されれば鮮明な映像が楽しめる」と話すが、元々2Kや4K用の機材を使って制作した映像のため、実際の8Kコンテンツに比べ、画質面ではやや劣ると言わざるを得ないのが実情だ。
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