気に入らないアノ人に心乱されない技術
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自分を責めたお母さん

うつ病の治療を受け回復した患者で、現在もやり取りを続けている女性がいます。夫も強迫性障害で私のところに通院しています。小1の長女、就学前の長男、そして3人目を妊娠中のお母さんです。彼女からこんな話を聞きました。
ある日の夕方のことです。食事の準備を整え、子どもたちに声をかけたところ、長男がクリスマスにもらったブロックを出して遊び始めました。
「何しているの。夕飯にすると言ったでしょう。もう、このブロックは捨てる」
お母さんがブロックをゴミ袋に突っ込むと、長男は大泣きしました。2階にいた長女は、その声に驚き、駆け下りてきました。そして、弟をなだめ、散乱していたブロックを片づけました。
しばらくして落ち着くと、お母さんは、「どうして、あんなにキレてしまったのだろう」と自らを責め、思い悩んだそうです。
安全・安心志向と情報化が目指しているものは、規律や指示に速やかに従うことを求められる管理された社会です。「食べろ」と言われた時に食べ、「片付けろ」と指示されたら片付けなければならない、そんなギスギスした関係性が強いられます。
そして、そこに自分の感情も管理していこうという考え方をしていくと、どうなるでしょうか?
感情をコントロールする秘訣なんてない
『エキスパートが教えるセルフ・コントロールのための七つの
例えば、こんなタイトルの本や文章があったとしたら、それはまやかしかもしれません。もし、そういうことを書いている心理学者や精神科医がいたなら、こう聞いてみてください。
「学生や患者に教えている内容はそれでも結構です。では、ご自身はどうしていますか。身近な家族、職場の同僚が困っていたらどうしますか?」
感情をコントロールする方法という耳触りのいい言葉よりも、「感情はコントロールできない」と、ある意味で、あきらめを持つことのほうが現実的な対処法の第一歩です。
悩みは悩みであるうちは単なる悩みです。悩みが悩みの原因になったら、悩みをコントロールできないと悩むようになったら、毎日が悩みの日々に変わってしまいます。
もっとも、いかに感情のコントロールが難しいとはいえ、感情の起こり方がまったくランダムというわけではありません。一定のルールがあります。
「コントロールができない」と「予測ができない」は違います。
あたかも、突然わき起こった感情に振り回されてしまっていると感じていたとしても、1~2か月、観察と記録を続けてみると、「感情の表れ方」に一定のパターンがあるのが分かってきます。
どんな感情であっても、そこに「始まり」と「終わり」があることに気づくでしょう。どのように感情が生まれ、どこへ収束するかが分かるようになれば、感情との付き合い方も変わってきます。
エキスパートが教える「こうやれば良い」は、必ずしも自分に当てはまるとは限りません。しかし、自分で気づくことができた「こういうときに、こうすると、こうなる」というプロセスはおおよそ間違いがありません。
その上で、コントロールすることができない感情とどう向き合えばいいでしょうか。そのヒントを四つ紹介しましょう。
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