こんなにいる!「ノーベル賞級」の日本人

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出てこい「二冠」科学者

厳粛な雰囲気に包まれるノーベル賞の授賞式(2015年撮影)
厳粛な雰囲気に包まれるノーベル賞の授賞式(2015年撮影)

 こうして見ると、日本人は大いに活躍していることがわかる。

 資源の乏しい日本は以前から科学技術立国を大目標に掲げ、「科学の一流国になる」のはある意味、悲願でもある。ノーベル賞の受賞者数がその国の科学技術力を計る指標の一つであることは論をまたないが、それだけではない。一般市民に科学になじみを持ってもらえるよう、ユーモア精神を忘れないのも、科学者の大切な資質と言える。

 この視点によると、「人を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」を顕彰する賞で、パロディー・ノーベル賞とも言われる「イグ・ノーベル賞」の意義も大きい。17年も北海道大学や慶応大学の研究者が、メスなのに「男性器」を持つ昆虫を発見した業績で生物学賞を受賞した。

 これで日本人の受賞は11年連続になり、世界に誇るべき堂々たる成果だといえよう。その中には、中垣俊之・公立はこだて未来大学教授のように微生物の粘菌を使った別々の研究で2度受賞に輝いた「つわもの」もいる。ならば今後は、「本家」と「イグ」をダブル受賞する日本人科学者に登場してほしいものだ。

 ノーベル賞とイグ・ノーベル賞の両方に輝く研究者……。「そんな人いるの?」と思うかもしれないが、実は過去に1人だけいる。

ユーモアたっぷりに行われる「イグ・ノーベル賞」の授賞式(米ハーバード大学で、2013年撮影)
ユーモアたっぷりに行われる「イグ・ノーベル賞」の授賞式(米ハーバード大学で、2013年撮影)

 2000年に「カエルの磁気浮上」という研究でイグ・ノーベル賞を受賞したロシア生まれのオランダ人科学者アンドレ・ガイム博士(英マンチェスター大教授)は、10年に「炭素新素材グラフェン」の研究でノーベル物理学賞を受賞している。

 余談だが、ガイム博士のノーベル賞の受賞業績「グラフェン」は、日本と少しばかり因縁がある。「炭素新素材グラフェン」は、飯島澄男・名城大学終身教授が1991年に発見した筒状の炭素素材カーボンナノチューブ(CNT)と同じ研究領域になる。炭素新素材といえば、球状の「フラーレン」発見者が96年にノーベル化学賞を受賞しており、飯島博士のCNTもノーベル賞の期待があった。しかし、ふたを開けてみると、飯島博士の発見よりも後に研究成果を発表したガイム博士の方がノーベル賞に決まった。当時の日本では、「先を越された」という受け止め方もあった。

 いずれにしても、炭素新素材をめぐるノーベル賞レースで日本発CNTの先を行き、おまけに、イグ・ノーベル賞まで受賞しているスーパー・サイエンティストは、日本人がまだ到達しえない高みにいることは確かだ。

 「科学を楽しむ余裕のある社会であってほしい」。大隅良典・東京工業大学栄誉教授は、今でもそう言い続ける。賞は違えど「イグ」受賞者もまた、同じ思いを抱いている。14年に「バナナの皮が滑る理由を科学的に解明した業績」でイグ・ノーベル物理学賞を受賞した馬渕清資・北里大学教授(現名誉教授)は、同大学の広報誌で次のような心情を吐露している。「受賞が、多くの人に笑顔を届け、科学の面白さを伝えるきっかけになったらうれしい」。これまでの「イグ」受賞実績と、近年のノーベル賞受賞者の増加を考え合わせれば、日本から「第二のガイム博士」が出ても不思議ではない。「その日」が来るのを楽しみに待ちたい。

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プロフィル
佐藤 良明(さとう・よしあき)
 読売新聞調査研究本部主任研究員。専門分野は生命科学、医療。科学部次長を経て現職。iPS細胞、ヒトゲノムなど最先端の生命科学や、脳死移植、新型インフルエンザといった医療の分野を中心に取材してきた。「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム」と「読売テクノ・フォーラム」を担当している。

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