「エルサレムは首都」…トランプ氏が開いた混乱の扉

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首都認定、四つの要因

トランプ大統領の「エルサレム首都宣言」に抗議して、投石を行うヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルスの人たち(8日撮影)=AP
トランプ大統領の「エルサレム首都宣言」に抗議して、投石を行うヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ナブルスの人たち(8日撮影)=AP

 なぜ、このタイミングでトランプ大統領がエルサレムを首都と認定し、米国大使館の移転を発表したのか、考えられる理由および背景は以下の4点である。

 (1)米大使館のエルサレム移転は、大統領選挙期間中からのトランプ氏の公約であった。イラン核合意の破棄、環太平洋経済連携協定(TPP)や気候変動に関するパリ協定からの離脱と同様である。

 (2)米議会は、1995年に大使館をエルサレムに移転する法案を可決している。米大統領が法案に署名しさえすれば、いつでも大使館の移転を命令することができるが、当時のクリントン大統領やその後のブッシュ大統領(息子)もオバマ大統領も、アラブ・イスラム諸国からの反発や和平交渉への悪影響を懸念して、大統領権限でずっと先送りにしてきた。先送りの手続きは6か月ごとに大統領が署名して行われるが、その手続きのタイミングが12月初旬だった。

 (3)トランプ大統領の支持層のつなぎ止めや、来年の中間選挙に向けて一層の支持拡大を狙ったものであるとの指摘もある。米大使館のエルサレム移転は、トランプ大統領を多額の政治献金で支えるユダヤ系の支援者が強く望んできたことでもある。トランプ氏に大口の献金をしたユダヤ人実業家のシェルドン・アデルソン氏もその一人だ。

 また、トランプ大統領の中核的な支持層であるキリスト教右派福音派の人たちも、米大使館のエルサレム移転を強く望んでいるとされる。福音派は聖書を文字通りに解釈する聖書信仰が強く、エルサレムは神がユダヤ教徒に与えた土地であると信じる人が多い。

 (4)そして最後に、多くのアラブ諸国でパレスチナ問題の優先度が下がっていることも挙げられる。シリアやイラク、イエメン、リビアなどは、内戦などによる混乱で自国が生きるか死ぬかの瀬戸際にあるため、「パレスチナの大義」どころではない。

 また、サウジアラビアなどの湾岸諸国にとって最も差し迫った課題は、過激派対策やイランの地域覇権拡大阻止である。サウジなどは、対イラン包囲網を形成するために、外交関係のないイスラエルと水面下で関係構築を進めていると言われる。

 サウジやアラブ首長国連邦(UAE)などはトランプ政権と親密な関係を保っており、あまり表だって批判したくないという事情もある。実際、トランプ大統領は、今回の発表に先立ってサウジのサルマン国王に電話しているし、トランプ氏の娘婿(むこ)であるクシュナー大統領上級顧問は同国王の息子であるムハンマド皇太子と密に連絡を取っていると言われる。

 つまり、エルサレムをイスラエルの首都と認め、米大使館をエルサレムに移しても、アラブ諸国政府からはそれほど強い反発は出てこない、もしくは、仮に民衆が反発しても政府が抑えてくれるので、短期的に限定的な反発で収束できるとトランプ大統領は考えたのかもしれない。

 イスラエルは、まずパレスチナ問題を解決してから他のアラブ諸国と国交を樹立するという従来の路線を変え、まずアラブ諸国との関係を構築してからパレスチナ問題を解決するという逆の考え方に傾きつつあると指摘する専門家もいる。

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