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今年こそ『源氏物語』…あなたが選ぶ現代語訳は?

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次々と生まれる価値、『源氏物語』の生命力

『源氏物語』の世界は今なお多くの人を魅了し続けている(写真はイメージです)
『源氏物語』の世界は今なお多くの人を魅了し続けている(写真はイメージです)

 以上、駆け足で明治から現代までの現代語訳をたどってきたが、初期の与謝野源氏や谷崎源氏の特徴は、『源氏物語』を現代語訳する営みのなかで、それぞれが理想とする日本語の文体を追求したところにある。

 与謝野晶子が狙ったのは、『源氏物語』を西洋の翻訳小説のように言文一致体で翻訳し、モダンな小説としての装いを強化することだった。一方、谷崎潤一郎は過剰なまでの女装文体を選ぶことで、王朝物語としての『源氏物語』を再創造しようとした。

 また谷崎は3度も訳を出すことで、『源氏物語』を訳すことが作家としての仕事の集大成であり、国民的作家である存在証明ともした。瀬戸内寂聴もそれを受けて、国民的作家としての訳業を意識しており、世界文学として押し出そうする橋本治の『窯変』とは対照的である。

 1000年の時空を超えて、今も読み継がれている『源氏物語』には、様々に読み解かれてきた歴史がある。古くは和歌や政治の指南書、後には女子教育の教科書、「もののあはれ」論など、時代の関心や要請に応えて、この物語はその価値を変えてきた。

 現代語訳に限っても100年以上の歴史があり、様々な訳が生まれている。『源氏物語』の生命力、その豊饒(ほうじょう)さ、()めども尽きぬ魅力には驚嘆するほかない。さらに世界各国での翻訳を加えてみれば、それぞれの訳が放つこの物語のイメージは、あたかも万華鏡のごとく多彩である。

 現在進行中の角田光代訳がやがて完成した時、『源氏物語』にはどのような新たなイメージが加わるのだろうか、興味は尽きないのである。

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プロフィル
河添 房江(かわぞえ・ふさえ)
 東京学芸大学教授。一橋大学大学院連携教授。1953年生まれ。専門は『源氏物語』を中心とした平安文学。85年、東京大学大学院人文科学系研究科博士課程単位取得退学。著書に『源氏物語と東アジア世界』(NHKブックス、2007年)、『光源氏が愛した王朝ブランド品』(角川選書、08年)、『唐物の文化史 舶来品からみた日本』(岩波新書、14年)などがある。

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