楽天は第4の携帯電話会社として生き残れるか?

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携帯電話事業参入は「一発逆転」?

 携帯電話事業への参入について、三木谷氏はツイッターで、「MVNOの好調さ、9000万人を超える会員ベースを考えても、参入は自然な流れだと思う」と述べている。

 だが、私にはそうは見えない。楽天はアマゾンに脅かされている。その焦りからか、多くのM&Aや新規事業を始めている。しかし、いずれの事業も飛躍的な成功を収めていない。

 『ビジョナリーカンパニー』の著者で知られる米国の経営学者、ジム・コリンズは一時期成功した企業が「衰退の五段階」を経て転落していくと指摘している。

 それは、<1>成功から生まれる傲慢があり <2>規律なき拡大路線をとっていく <3>社内ではリスクと問題の否認の議論が多くなる。また、トップの決めたことに誰も異を唱えなくなる <4>一発逆転の追求を経て <5>凡庸な企業へ転落してしまう――という5段階である。第4段階では、新戦略へ一貫性のない飛躍、劇的で大きな動きによってすばやく突破口を開こうとする傾向が見られるという。

 楽天の携帯電話事業参入は、キャッシュフローの獲得と「楽天経済圏」を構築するためとされているが、それは、まさに「一発逆転策の追求」のように思われる。

私が三木谷氏の参謀だったら

 孫氏は、2004年頃から「これからはモバイルインターネットの時代が来る」とスマホ革命を見通し、「次代を開く携帯電話をつくれるのはジョブズしかいない」とアップルの共同設立者の一人、スティーブ・ジョブズに会いに行った。そして、直接交渉により、iPhoneの独占販売権を得た。

 当時は、「(テンキー式)携帯電話の方が使いやすい。日本でiPhoneは売れない」などと言われていた。今では想像しにくいが、リスクある決断だった。iPhoneが既存事業者への破壊的イノベーションとなり、結果として、ソフトバンクを飛躍させた。

 時代はIoT革命の入り口にあり、新規参入者にとって破壊的イノベーションを起こすチャンスでもある。今後、携帯電話に変わる情報端末として有力視されるのが自動車だ。私が三木谷氏の参謀だったら、「テスラモーターズのイーロン・マスク氏などと連携を深めるべき」と進言するだろう。

アジアでナンバーワンを目指す

 国内にとどまらない国際戦略も重要だ。私が参謀だったら、「携帯電話事業でキャッシュフローを得て、M&A戦略を積極的に進めるべき」と伝えたい。

 目標は、日本で4番目でなく、アジアでナンバーワンの通信企業である。シンガポールに拠点を置く通信会社シングテル・グループが参考になる。同社は、タイのAIS、インドネシアのTelkomsel、インドのBhartiなど、アジア、アフリカの通信企業に出資。オーストラリアのOptusを完全子会社化して顧客数約5億人、中国を除くアジア地域最大の通信企業だ。

 ドコモ、au、ソフトバンクの3大キャリアは、国内市場がメインのため、基本的にドメスティックである。ソフトバンクを見ても、ソフトバンクグループという持株会社はグローバル投資をしているが、通信事業は国内市場にとどまっている。英語の公用語化などグローバル化を進めてきた楽天は、この点で優位性がある。

 三木谷氏が、まずすべきことは、毎年春にスペイン・バルセロナで行われる世界最大級の携帯通信関連見本市であるMWC(モバイル・ワールド・コングレス)に登壇し、楽天の考える世界戦略を訴え、楽天の名前を世界にアピールすることである。

 私が三木谷氏の参謀だったら、このスピーチで語るビッグピクチャーを考え始めているに違いない。

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プロフィル
嶋 聡( しま・さとし
 1958年生まれ。名古屋大学経済学部卒。松下政経塾東京政経塾代表を経て、96年、愛知13区より衆議院議員に初当選。2005年、ソフトバンク社長室長に就任。14年まで8年3000日を務め、「孫正義社長の参謀」と呼ばれた。現在は多摩大学客員教授として経営戦略などの講義をする。

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