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教科書に載らない?坂本龍馬を伝説にした“裏の顔”

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「司馬の創作」は誤りだが……

京都市に立つ薩摩藩邸跡の石碑。ここで龍馬が西郷隆盛と会談したとされる
京都市に立つ薩摩藩邸跡の石碑。ここで龍馬が西郷隆盛と会談したとされる

 司馬は『竜馬がゆく』執筆にあたり、東京・神田の複数の古書店からワゴン車1台分の古文書を買って龍馬の生涯を徹底的に調べている。

 ちなみに龍馬は戦前の国定教科書にもしっかり登場しているし、没後16年の1883年(明治16年)には、文筆家の坂崎紫瀾(さかざきしらん)(1853~1913)が伝記『汗血千里駒(かんけつせんりのこま)』を高知の新聞に連載し、大評判になっている。「日本人が抱く龍馬像は司馬の創作だ」と決めつけたり、「『竜馬がゆく』が出る前は龍馬は無名だった」と龍馬を過小評価したりするのは、明らかな間違いなのだ。

 その一方で、現代の龍馬像には司馬の影響を受けた創作や脚色が含まれていることも間違いない。「死ぬときはドブの中でも前のめりで死にたい」という龍馬の名言がその一例。昭和の人気アニメ『巨人の星』で星一徹が息子の飛雄馬にこの言葉を教えた場面があり、私の世代にはこの言葉に感動して龍馬好きになった人もいるが、史料や手紙にこんなセリフはない。

 原作者の梶原一騎(1936~1987)が、『竜馬がゆく』の中の「志士ハ溝壑ニ在ルヲ忘レズ(志士はいつでもドブに落ちて死ぬか分からない)」という龍馬のセリフにヒントを得て創作した話とみられている。

 『巨人の星』の週刊少年マガジンへの連載は、『竜馬がゆく』の新聞連載直後に始まっている。「飛雄馬」という主人公の名前も「人間(HUMAN)・龍馬」から付けられたくらいだから、司馬の影響を受けるのは当然だ。やはり、史料に立ち戻らないと真の龍馬像は見えてこない。

 しかし、豊富な一級史料をいくら読んでもわからないこともある。権力も財力もコネもない一介の浪人に過ぎなかった龍馬が、なぜ旧体制と新体制の双方を動かせるほどの人脈を築けたのか。もちろん、龍馬にはそれだけ人間的な魅力や能力があったのだろうが、犬猿の仲の薩長を同盟させる接着力や、土佐に大政奉還の建白をさせてしまう突破力は、それだけでは説明できない。

 その理由は、龍馬が理想主義者と現実主義者という2つの顔を持っていたからではないか。龍馬は「日本のせんたく」という高い目標を掲げる一方で、実現のためなら、どんな手もいとわなかった。出世のためでも藩のためでもなく、日本のために動くのだと宣言した上で、自ら汗をかいて実現に奔走するから、立場を超えて多くの人が信用したのではないか。

高き理想で信頼を勝ち得る

 理想主義者の顔が見えるのが、1867年(慶応3年)に結ばれた「薩土盟約」だ。幕府から明治新政府への政権移行を平和裏に進めようとしていた土佐が、武力討幕に傾いていた薩摩に呼びかけて結んだこの盟約に、龍馬は深く関わっている。

 盟約はわずか3か月で解消されたため、薩長同盟や大政奉還ほど知られていないが、約定書という形で明治新政府の政権構想を初めて明文化し、その後の新政府の基本方針の原型を示した意義は大きい。

 その内容は大政奉還、王政復古にとどまらず、将軍職の廃止、朝廷の制度の刷新、不平等条約の改正にまで及んでいる。上下両院の議事院を設け、議員は公卿(くぎょう)から庶民に至るまで「正義純粋」の者を選抜すること、官僚は「公平無私」を貫き「人心一和」することまで盛り込んでいる。「正義純粋」「公平無私」といった言葉は、龍馬がねじ込んだとみられている。

 協議には応じたものの、薩摩藩は倒幕に向けて煮え切らない土佐藩を信用していなかった。そこで約定書に新政府の理想を書き込み、「土佐は私利私欲ではなく、日本のために薩摩と結ぶのだ」ということをはっきりさせて、大政奉還・王政復古への本気度を示したのだろう。龍馬が「正義純粋」「公平無私」という言葉をねじ込んだのは、理想は高ければ高いほど本気度が相手に伝わると思ったからではないか。

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