やばい?大人の語彙力が若者にジワジワくる理由

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足りなかったのは「語彙力」

(画像はイメージ)
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 同じようなことは、多くの国民が感じているようです。

 文化庁が昨年発表した「国語に関する世論調査」(2016年度)で、「コミュニケーション能力とはどのようなものか」の問いに、「言葉に関する能力」と答える人が6割以上に上っていました。

 多くの日本人が、言葉の大切さに気付き始めているのです。

 特にビジネスに支障を感じ始めた「大人」は、斎藤教授の本のタイトルにもある「語彙力こそが教養である」を見てドキッとしたのではないでしょうか。「うわ~、ヤバイ。自分のことだ」と手に取って「そうか、自分に足りなかったのは語彙力だったんだ」と気付いたに違いありません。つまり、語彙力ブームは、大人たちの危機感がきっかけだったのだと思われます。

言い方をちょっと変えるだけで…

 実際に私の会社で働く30代の男性社員が、相槌(あいづち)を「なるほど」から「おっしゃる通りです」と言い替えただけで、得意先からの指名が増えたことがありました。

 「なるほど」はなんとなく上から目線に聞こえますが、「おっしゃる通りです」と言われると、肯定感がぐっと増します。それだけでビジネスパーソンとしての印象が良くなったようです。

 ちなみに、この「なるほど」⇒「おっしゃる通りです」の言い換えは、斎藤教授の「大人の語彙力ノート」にも紹介されています。それだけ効果てきめんということでしょう。

 また、「頑張ります」が口癖だった社員が、「手を尽くします」と言い替えただけで「口だけではなく、しっかりやってくれるんだ」といった印象が強くなりました。

 このように表現をちょっと変えられるのが「語彙力」です。それは、人間関係、ビジネス、コミュニケーションを言葉のチカラでサポートしてくれるのです。

「大丈夫」は大丈夫じゃない

 「語彙力」は、今後さらに必要になりそうです。

 本格的なAI(人工知能)の時代「第4次産業革命」がじわじわと迫ってきているからです。近い将来、生活のあらゆるシーンにIoT(モノのインターネット)が浸透し、冷蔵庫やエアコンなどが私たちに話しかけてくるでしょう。

 ここで忘れてはいけないのは、AIは正しい日本語がインプットされ、優れた学習能力を備えていることです。

 iPhoneのSiRiやアマゾンエコーに話しかけ、「あなたの言葉が理解できません」とそっけなくあしらわれた経験をした人も多いと思います。しかし、若者言葉やSNS言葉なども、AIは徐々に言葉そのものを認識するようになるかもしれません。

 「ゆめかわ(夢のようにカワイイ)」「フニーター(ニートに近いフリーター)」「ベッケンバウアー(別件がある)」など、「?」と思うような新語ですら、すぐに認識できてしまう可能性はあります。

 でも、それは、こんな事態を招きかねません。

 部長「今晩、一杯どうだ?」

 部下「あっ、大丈夫です」

 予定のあった部下が、部長の誘いを断ったそうです。しかし、部長は「大丈夫? 大丈夫なら来るんじゃないのか」とふに落ちない様子でした。こんなふうに言ったほうが良かったかもしれません。

 「せっかくですが、先約がありますので失礼します」

 「お気遣いありがとうございます。仕事が残っているのでご遠慮申し上げます」

 おそらく、AIは「大丈夫です」という言葉を認識することはできるでしょう。ただ、それが、YESなのか、NOなのかを理解できるかどうかは分かりません。同じことが、今、SNS言葉を使った人間同士のコミュニケーションでも生じているのです。

 大人も若者も今のうちにSNS語を見直して、AIともスムーズに話せる語彙力を身に付けてほしいものです。ちょっと気の利いた言い回しは、AIからも「サスガ!」と一目置かれるかもしれませんね。


プロフィル
殿村 美樹(とのむら・みき)
 PRプロデューサー。京都府宇治市出身。TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「ひこにゃん」(滋賀県彦根市)、「うどん県」(香川県)など地方のPR戦略を手がけてきた。「今年の漢字」もプロデュース。主な著書は「テレビが飛びつくPR」(ダイヤモンド社)、「ブームをつくる」(集英社新書)など。

『ブームをつくる』(集英社新書)
『ブームをつくる』(集英社新書)

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無断転載禁止
8934 0 深読み 2018/02/23 09:27:00 2019/01/22 16:01:59 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180220-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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