元大統領逮捕、韓国「積弊清算」の底流にあるもの

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私たちの中の「崔順実」

国際女性デーの3月8日、ソウルで開かれた集会に参加した人たち。♯Me Too運動は韓国でも急速に広がっている(AP)
国際女性デーの3月8日、ソウルで開かれた集会に参加した人たち。♯Me Too運動は韓国でも急速に広がっている(AP)

 平昌五輪の期間中、ネット社会の韓国で最も検索された用語は「安煕正(アンヒジョン)」である。忠清南道(チュンチョンナムド)の知事として昨年の大統領選では「共に民主党」の党内予備選で文在寅氏と争い、ダブルスコア以上の差で敗れたものの、「次」への期待の星だった。586世代に属するが、外交・安保政策では中道路線を掲げると同時に、「新しい争点」のフェミニズムも自ら率先して推進するなど、「新しい進歩」を体現していたかのように見えた。

 ところが、女性秘書に「性的暴行された」と告発されると、安氏は知事職を辞任し、刑事告訴されただけでなく、その欺瞞(ぎまん)が完全に暴かれた。

 ハリウッドの女優が監督やプロデューサーなどによる性暴力に声を上げたことで始まった「#MeToo」に韓国でも呼応し、検事や大学教授、芸術家など社会的に名の知れた男性に対する告発が続いている。それも、当事者がまずテレビの生放送に実名で出演するというかたちで「劇的に」行われているが、通常の手続きで告訴したところで、逆に名誉毀損(きそん)に問われ、泣き寝入りせざるをえないことがほとんどだったことと関係している。

 その一方、数の上では圧倒的に多いはずの一般の男性のケースはまだ見逃されたままである。移住労働者など、さらに立場の弱い女性たちの声は聞こえてこない。

 職場や学校など日常生活の中で立場の強い「甲」と弱い「乙」の間で起きる様々な問題、「カプチル(韓国語で『甲の横行』という意味)」の方が、五輪の金メダル数や北朝鮮の「非核化」の行方よりも気になるのは、ある意味、当然のことである。

 大韓航空会長の娘がピーナッツの出し方がなっていないとしてチーフパーサーを降ろすために自社機を引き返させた「ナッツ・リターン事件」に韓国民がこぞって怒ったのは、チーフパーサーとはいえ労働者は経営者の前では「乙」にすぎないということをまざまざと見せつけられたからである。検察出頭時の「甲」をマスコミが取り囲むのは、(さら)し者にしてスカッとしたいからではなく、最初から真っ当な労使関係、対等な「甲乙関係」を望んでいるということなのである。

 「ろうそく革命」から#MeTooへの流れは、単に朴槿恵氏や李明博氏を塀の中にぶち込んで自己満足するのではなく、自分自身も、「甲」に群がり利権を(むさぼ)ろうとしていなかったか、「乙」に対して横暴に振る舞わなかったか、と振り返る契機になっている。つまり、私たちの中の「崔順実」という自省が、政治改革にとどまらない社会変革を生み出す原動力になっているのである。

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14752 0 深読み 2018/03/29 10:01:00 2018/03/29 10:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180328-OYT8I50050-1.jpg?type=thumbnail

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