「非核化」巡りすれ違い、米朝首脳会談に漂う暗雲

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中国は正面きって米国と戦えない

中朝首脳会談に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と中国の習近平国家主席(新華社AP)
中朝首脳会談に臨む北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と中国の習近平国家主席(新華社AP)

――中朝首脳会談が行われたことにより、北朝鮮は中国の後ろ盾を得たことになるのではないか。

 「中国が北朝鮮の肩を持つからといって基本的な構図は変わらないのではないか。米国が北朝鮮の非核化という目標を捨てることはない。一方、中国は米国が追求する目標を露骨に妨害することはできない。

 すでに始まった米中間の貿易戦争で、中国は表向き強気だが、米国が本気を出せば中国経済は危うくなる。米国が中国製品に高関税をかければ、中国の競争力はまたたく間に落ちる。為替操作国に指定されたら、影響は計り知れない。中国は米国から輸入する大豆や豚肉に高関税をかけようとしているが、生活に欠かせないこれらの品々が入ってこなくなれば、中国が混乱に陥る可能性もある。北朝鮮問題で中国がちょっと違う方向を向いているので、米国は経済で圧力をかけている。

 中国は正面きって米国に喧嘩(けんか)を売ることができない状況だ。北朝鮮問題で中国は仲介者として対応するかもしれないが、北朝鮮と一緒になって米国を敵に回すことはない。ただ、中国が参入したことで、北朝鮮核問題の解決方法がより複雑になり、時間が延びる可能性はある」

米朝首脳会談三つのシナリオ

ホワイトハウスで北朝鮮に関する記者団からの質問に答えるトランプ米大統領。北朝鮮問題はトランプ政権の最優先課題の一つだ(ロイター)
ホワイトハウスで北朝鮮に関する記者団からの質問に答えるトランプ米大統領。北朝鮮問題はトランプ政権の最優先課題の一つだ(ロイター)

――米朝首脳会談の見通しはどうか。

 「首脳会談に入る前に、議題を調整しなければならない。調整役は米国側がボルトン氏になる可能性が高い。北朝鮮側は金英哲(キムヨンチョル)朝鮮労働党副委員長、あるいは、4月5日の南北実務者協議に出ていたキム・チャンソン国務委員会部長だろう。キム・チャンソン氏は金正恩委員長の秘書室長にあたる人で、韓国に対する度重なる挑発に加わっていない。

 議題の調整は難航するかもしれないが、米国は正恩氏が北朝鮮の核を今後どうするかを公の場で言ったことがないので、引きずり出して彼の口から言わせようとするだろう。それを前に北朝鮮が引っ込む可能性がある。これが一つ目のシナリオ。二つ目のシナリオは会談が開かれ、米国は『先に核を放棄しろ』と迫り、北朝鮮が『それは最後だ。核の放棄は目標だ』と言って決裂してしまうというもの。もう一つは、首脳会談の時期を少し遅らせるというシナリオ。その三つが考えられる。

 米国は首脳会談をやるという強い意志を持っている。そうすると、こじれる可能性が高く、一気に緊張が高まるのではないだろうか」

――日本が影響力を行使する余地はないのだろうか。

 「今月中旬に行われる日米首脳会談で、安倍首相は北朝鮮の核問題を玉虫色の解決にだけはしてほしくないと注文をつけるべきだし、そういうことを言うのではないかと思う。日米両国の関係を再確認するとともに、北朝鮮の意図についても意見を交わすだろう。

 トランプ大統領と長年一緒に仕事をしてきた人の話では、トランプ氏は何か一つ取引をする前に潔癖と思われるぐらい完璧に準備をするのだという。米朝がこじれた場合、あるいは有事の際の日本の協力などについても突っ込んだ話し合いをするのではないか。

 有事になっても、北朝鮮の核問題が解決しても、米国が一番頼りにしているのは日本だ」

プロフィル
李 相哲( り・そうてつ
 龍谷大学社会学部教授。1959年、中国・黒龍江省生まれ。北京中央民族大学卒業後、中国の日刊紙記者を経て87年に来日。95年、上智大学大学院文学研究科新聞学専攻で博士号(新聞学)取得。同大学国際関係研究所客員研究員などを経て98年、龍谷大学社会学部助教授。2005年より現職。主な著書に『朴槿恵<パク・クネ>の挑戦 ―ムクゲの花が咲くとき』(中央公論新社)、『金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか』(産経新聞出版)などがある。

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15719 0 深読み 2018/04/06 17:57:00 2018/04/06 17:57:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180406-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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