「猛毒で重体」二重スパイに報復か…英露暗闘の真相

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「シリア化学兵器開発情報」を漏えい?

シリアの首都ダマスカス郊外で、化学兵器とみられる攻撃を受け、治療を施される赤ちゃん(2月25日)。暗殺未遂事件はシリアでの化学兵器開発に関する情報漏えいへの報復か=AFP時事
シリアの首都ダマスカス郊外で、化学兵器とみられる攻撃を受け、治療を施される赤ちゃん(2月25日)。暗殺未遂事件はシリアでの化学兵器開発に関する情報漏えいへの報復か=AFP時事

 英メディアでは、「スクリパル氏に毒を盛ったのがロシア政府だった」という前提で、その動機について様々な観測が出ている。

 ザ・タイムズ紙は、スクリパル氏と同じGRUに所属し、今は西側に亡命して暮らすボリス・ボロダルスキー氏のインタビューを掲載。暗殺未遂事件は、シリアでの化学兵器開発に関する情報をスクリパル氏が西側情報機関に漏らしたことへの報復だとする見方を紹介した。

 ボロダルスキー氏によると、ロシアは長年、シリアに資金と技術を提供し、同国内に建設した研究所で化学兵器を生産していたが、昨年12月、CIAとMI6から情報を得たイスラエル軍に空爆された。ロシアはこの情報提供にスクリパル氏が関与したとみて、兵器レベルの神経剤で殺傷能力の高いノビチョクを使って襲撃したというのだ。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、(1)ロシアとプーチン大統領が、「裏切り者」「敵」とみなす亡命ロシア人に対し、裏切りには代償が伴うことを知らしめるため、スクリパル氏を見せしめとした(2)事件の2週間後に実施されたロシア大統領選を前に、あえて西側との緊張関係を作り出し、「外国に屈しない強い指導者」としてのプーチン氏を有権者にアピールする――などの狙いが考えられると分析する。

12年前、ロシア人元中佐も放射性物質で殺害

 英国では、2006年にはロシアの別の諜報機関、連邦保安局(FSB)の元中佐アレクサンドル・リトビネンコ氏(当時43歳)が放射性物質ポロニウム210を盛られ、殺害された。英国はロシアに在住するロシア人男性を殺人罪で起訴したが、ロシアが男の身柄引き渡しを拒否している。

 13年には、プーチン氏と激しく対立して英国に亡命したロシアの政商ボリス・ベレゾフスキー氏(当時67歳)が、ロンドン郊外の自宅浴室で窒息死しているのが見つかった。当時は自殺と結論づけられたが、ここに来て英当局による再捜査の可能性もささやかれる。

 英国を舞台にしたロシア人元スパイの暗殺未遂事件。仮に英捜査当局が今後、実行犯を特定できたとしても、その犯人を逮捕・起訴し、公判で動機を解明するところまで行き着く可能性は、高くはないだろう。冷戦期のスパイ戦を思い起こさせる不気味な事件が続く中、国際社会でロシアに対する警戒感は確実に広がり続けている。

プロフィル
大内 佐紀( おおうち・さき
 読売新聞調査研究本部主任研究員。1986年入社。主に国際報道に携わり、ワシントン、ジュネーブ、ロンドン各特派員。英字紙ジャパン・ニューズ編集長、編集局次長などを経て2017年6月から現職。

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