読売新聞オンライン

メニュー

セブン、MONO…「色だけで商標」の魅力と高い壁

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

日本では超難関の「単色商標」

 さて、新商標の制度で日本に先行した欧米を改めて振り返る。

 色彩商標の代表は、米宝飾大手ティファニーが袋や包装などに使っている水色で、「ティファニーブルー」として登録されている。「ああ、あの色か」とほとんどの人が目に浮かぶに違いない。米物流大手UPSも企業カラーの「チョコレートブラウン」を登録済みだ。この色を使ったトラックの車体や従業員の制服などが広く浸透しており、色彩がまさに企業イメージに直結している点が、商標として認められた理由である。

 ティファニーとUPSの場合は単色だが、日本では、セブン―イレブンもトンボ鉛筆も多色の組み合わせで、単色商標はまだ認められていない。

 商標の出願を受け付け、審査を担当する特許庁の態勢はどうなっているのだろうか?

 企業などからの出願を審査している特許庁商標課のスタッフは、約140人いる。このうち新商標は若いセンスなど「新しい時代感覚」が必要と判断し、現在は若手を中心に少人数で審査を担当している。

 審査の際に重要となる点は、既存の商標でも新商標でも同様だ。特許庁商標課商標審査基準室の担当者は、「最も重視しているのは識別力の有無がポイント」と強調する。識別力――すなわち、自社のものと他とを明確に分ける力。こうした点からも、「(商標登録で)最もハードルが高いのが単色」と同担当者は明かす。

 色彩商標での識別力とは、色を見ただけで、どの企業が製造・販売しているとか、どの企業のサービスかについて、消費者、利用者などが瞬時に見分けられることを意味する。その色をどれくらい長い期間使っているかといった点をはじめ、使用する機会や量が多いなどの実績、地域限定でなく全国的に使われているかとか、消費者だけでなく取引先の企業の間での浸透度も総合的に考慮されるのだという。使用期間が長ければOKというわけでもなく、担当者がさまざまな基準で浸透度を厳しくチェックする。出願する企業にとっては、一筋縄ではいかないのが実情といえよう。

 「強力な商標権を独占的に認めるだけの色彩かどうか?」「識別力が卓越しているかどうか?」などについても、審査当局は厳しく評価している。類似品が多ければ、識別力の有無の判定でマイナス材料になることにも注意したい。

仏ルブタン「靴裏の赤」は認められず

「靴裏の赤」をアピールするものの、日本での色彩商標は得られていないクリスチャン・ルブタンの商品群(東京・南青山の店舗で、2013年撮影)
「靴裏の赤」をアピールするものの、日本での色彩商標は得られていないクリスチャン・ルブタンの商品群(東京・南青山の店舗で、2013年撮影)

 単色商標については、その登録の難しさを示す実例がある。

 赤い靴底で知られるフランスの靴ブランド、クリスチャン・ルブタンは、欧州諸国などで単色商標の権利を手に入れている。しかし、日本では出願があったものの、靴裏の赤色は商標権として認められていない。

 特許庁はその理由について、日本市場でも赤い靴裏の商品が複数社から販売されており、「1社のみで登録を認めると、すでに赤い靴裏の商品を販売している他社の既得権を侵害する恐れがあると判断している」という。日本国内では裏が赤い靴がもはや1社だけでは商標として認めるだけの識別力を持たないということだろう。

 特許庁によると、現在、色彩の商標出願件数は519件。このうち、単色での出願が相当数に上るという。色彩の権利化をめぐって産業界では、「その色を他社に奪われないように出願する」という傾向がある。「色の争奪戦」とも言える状況だ。ただ、単に登録したい色や複数の色の組み合わせを出願するだけでは、識別力の立証に乏しいと判断されてしまうだろう。

 ティファニーやUPSのように単色で企業イメージが定着しているような色彩をブランド化している企業が日本に存在するかどうか。審査中の企業の中から単色の初認可が出るかも知れないし、これから出願をめざす企業が現れることも考えられる。いずれにしても、識別力が卓抜しているという立証を行って特許庁のハードルを乗り越える必要がある。出願を検討する企業には、特許庁が4月初めに改訂版をホームページ上にアップした「商標審査便覧」が参考になるだろう。

1

2

3

4

無断転載・複製を禁じます
21581 0 深読み 2018/05/14 11:00:00 2018/05/14 11:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180511-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)