次の産業革命へ、勢いがある中国とのんびり日本
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「14億プラス1億」の経済圏

松下幸之助はかつて、「21世紀はアジアに繁栄が巡ってくる」として、中国の近代化に貢献するとともに、中国市場へ進出した。
孫正義は2000年、中国のGDPが日本の6分の1だった時代に、「アジアを制するものは世界を制する」として、アリババのジャック・マーに20億円を投資して、3分の1の株を取得した。アリババは14年、ニューヨーク証券取引所に上場。25兆円の時価総額となった。20億円の投資は、4000倍の約8兆円に膨らんだ計算になる。これは、その後のソフトバンクの投資戦略を支えた。
20世紀を代表する創業経営者である松下幸之助も、21世紀の代表格と言える孫正義も、多くの人が「中国はリスクがある」と言っていた時代に、リスクを見越した上で行動し、成功をつかんだ。
「日本は人口が減少するからと悲観的な見通しが多い。だが、中国と一つの経済圏と考えれば、14億プラス1億で15億の経済圏となる。人口も減少するどころか増える」
孫正義の言葉である。
このところ、日本のベンチャー経営者と話すことが増えた。「少なくとも1兆円企業は目指したい」という志の高い若者が多い。ところが、中国とのビジネスを巡っては、難しいという印象を拭えず、どうしても身構えてしまうようだ。
恐るべし、中国の若き経営者

一方、中国の若き経営者らはチャレンジ精神が旺盛で、日本にも頻繁に訪れて市場動向などを研究している。中国では、創業経営者たちが学び直すEMBA(エグゼクティブMBA)が盛んだ。MBA(経営学修士)の取得を目指すのは、主に20代後半~30代だが、EMBAは一定の成功を収めた30~40代の起業家が、さらなる飛躍を目指して学んでいる。
授業料は、日本円で1000万円以上。アリババのジャック・マーも卒業した長江商学院や中欧国際商学院が有名で、日本で行った講義で私も何度か教壇に立った。熱心な学生から質問が相次ぎ、授業時間が足りなくなることは珍しくない。彼らは、松下幸之助や孫正義の「経営理念」を重視するマネジメントに関心を寄せ、安全安心な日本の商品、「顧客本位のサービス」を必死に学ぶ。
引率の中国人教授に聞くと「学生のほとんどは成功した地位にあるが、学校と学友からもっと学びたいと考えている」とのことだ。中国の若き経営者、恐るべしである
OECD(経済協力開発機構)の予想では、中国の実質GDPは2021年、アメリカを抜いて世界一になる。中国に対して様々な感情があるだろうが、これが現実である。
第三次産業革命は、このままでは、中国がリードしてしまうだろう。松下幸之助も、孫正義もリスクをとりながら中国と付き合った。第三次産業革命の時代に日本の経営者に求められるのは、「14億人+1億人=15億人」の経済圏をにらんだクレバーな戦略なのである。
