米老舗ギターメーカー、ギブソン経営破綻の背景

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ギブソンCEO「楽器事業にフォーカス」

 留任するギブソンのヘンリー・ジャスキビッツ最高経営責任者(CEO)は声明で、不採算事業や非主力事業の一部からは撤退し、「ギブソンの主力事業である楽器事業にフォーカスしていく」と明言した。

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 ギブソンにとっての楽器事業は、すなわちギターの製造・販売だ。ギブソンの経営破綻により、「ギターの時代は終わった」といった音楽ファンらの声も耳にする。しかし、実際のギター市場は世界的に拡大傾向にある。そして、現在、ギター市場を先導しているのは、アコースティック・ギターやウクレレなどの「アナログ」なギターである。

アコースティック・ギター
アコースティック・ギター

 全米楽器商協会によると、米国ではアコースティック・ギターとウクレレの販売数が年々増加しており、2017年のウクレレなども含めたすべてのギターの売上合計額は、前年から1億ドル増え、約13億ドル(約1430億円)に達した。さらに、米国の調査会社・IBISWorldも、米国のギター市場が「5年連続で拡大している」と指摘。この傾向は少なくとも22年まで続くと予測している。

 背景には、テイラー・スウィフトやエド・シーランら、アコースティック・ギターを愛用する人気アーティストらの存在があるだろう。また、昨今のアナログ・レコードの人気再燃と同じく、音楽ファンらが「デジタル」なものよりも「アナログ」なものに価値を見いだす「アナログ回帰」の傾向も強く影響していると筆者は考えている。

 ギブソンのギター事業も会社の屋台骨が揺らぐ中で好調をキープしており、現在も世界80か国以上で年間約17万本のギターを販売している。特に、17年はギブソンの主力であるエレキギターの売り上げだけで、前年比11%増の約1億2200万ドル(約134億円)に達したという。

気を吐くあのライバル

ギター各社は顧客開拓に知恵を絞っている
ギター各社は顧客開拓に知恵を絞っている

 そして今、ギター市場で気を吐いているのは、ギブソン最大のライバルとされるフェンダーだ。

 フェンダーは、米ナイキや米ウォルト・ディズニー・カンパニーで最高マーケティング責任者などを歴任したアンディー・ムーニーCEOが主導した、緻密な市場調査に基づくさまざまな顧客開拓戦略が奏功し、徐々に売り上げを伸ばしているという。

 特に、若年層や初心者向けの低価格帯ギターの販売や、定額制のオンライン・ギターレッスン教室の開設など、顧客のニーズに合わせ、製品やサービスを拡充させているのが目を引く。

ヤマハも米国に拠点を移転

 そして日本からは、楽器メーカーとして世界的な知名度を誇るヤマハが、ギターで本格的に米国市場に進出しようとしている。

 ギター事業の戦略立案の拠点を、「ギター人口」の多い米国に移し、14年に買収した周辺機器の製造販売を行う米国子会社「Line 6」の名称を「ヤマハ・ギター・グループ(YGG)」に変更。ギターブランドとしての「ヤマハ」、周辺機器の「Line 6」、そして、今年、譲り受けた米国のベース向けアンプブランド「Ampeg(アンペグ)」の「3本柱」で、ギター関連事業の拡大を目指すという。

 今後、さらなる激化が予想される世界のギター市場。ギブソンが再び勢いを取り戻すには、「神髄」とも言うべき質の高いギター作りに原点回帰し、ファンの声にしっかりと耳を傾け、それに応えることが重要だ。「新生ギブソン」としての復活に大いに期待したい。


プロフィル
八木 京子(やぎ・きょうこ)
 江戸川大学社会学部准教授。立命館大学産業社会学部卒業。早稲田大学大学院商学研究科専門職学位課程修了(MBA)。大学卒業後、クリエイティブマンプロダクションにて、レディー・ガガなど多数の海外アーティストの来日公演、日本最大級のロック・フェスティバル「サマーソニック」などのプロモーション、マーケティングを統括。その後、世界最大手のコンサートプロモート会社、ライブ・ネイションの日本支社にてマーケティング部長、早稲田大学商学学術院総合研究所の助手を経て、2015年より現職。専門は音楽ビジネス、エンターテインメントビジネス、アートマネージメント。

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