地震後の流言、繰り返されるのにはワケがある

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人間はだまされやすい

スマホを見ながら運転再開を待つ人たち。ニセの情報に踊らされないことが大切だ(18日午前8時28分、大阪市北区で)
スマホを見ながら運転再開を待つ人たち。ニセの情報に踊らされないことが大切だ(18日午前8時28分、大阪市北区で)

 では、そうした情報に踊らされないようにするにはどうすればいいのでしょうか。自分はだまされないと思っているかもしれませんが、人はだまされやすいものです。

「ゴミ屋敷」問題はなぜ片付かないのか

 なぜなら、人は「信じる」のが基本だからです。サルや鳥は、敵が来たらだれかが騒いで群れに知らせます。みんなはそれを信じて逃げる。だれかが「こっちに食べ物があるぞ」と叫んだら、みんなが集まってくる。それが集団生活というものです。人間だって同じです。

 ただ、人間の中にはわざとうそをつく人もいる。さらに、口コミとは比べ物にならないくらい、広く速く情報を広めることができる機器を手に入れました。それに人間の心が追いついていないのです。

 災害時、人はみな浮足立っています。「怖いよ」と思う人もいれば、「何かしてあげなきゃ」と思う人もいる。そんな中で「ライオンが逃げた」と聞けば、「これは伝えなきゃ」と思うでしょう。災害時、被害の中心地にいる人はみんなで助け合い、意外と冷静です。パニックはむしろ周辺で発生しています。

ウソ情報の方が速く拡散

ネットの情報は玉石混交。本当の情報よりウソの情報の方が速く拡散する(写真はイメージ)
ネットの情報は玉石混交。本当の情報よりウソの情報の方が速く拡散する(写真はイメージ)

 私の知り合いで、「ヨーロッパの公立病院で生まれた赤ちゃんには全員チップが埋め込まれていて、それを使って政府は人間を管理しようとしている」というネット上の情報を信じている人がいました。

 聞いた時に即座に否定はできませんでしたが、本当なら私の耳に入ってきてもいいはずです。情報をたどっていくと、みんな一つのサイトに行き着きました。よくできたページではありましたが、新聞はこの件を扱っていません。案の定、「そういうウワサがあるが、それはウソだ」という情報が出てきました。

 政府は怪しい、何か悪いことをしているに違いないという考えが土台にある人は、例えば、時の総理がこんな悪いことをしていると聞いたら、すぐリツイート(引用)したくなりますよね。自分の感情にぴったり、自分の思想にぴったりという時こそ要注意です。

 私も一度、自分がリツイートしたものが、間違いであることを他人に指摘され、「みなさん、すみません。さっきのは間違いです」と謝ったことがありました。知らなければ、どんどん情報を広めて恥をかくところでした。

 でも、そこで人の言うことを素直に聞くということが大切かもしれません。中には、ウソだと指摘されると怒り出す人もいます。「もし、こっちが本当だったら責任はとれるのか」みたいなことを言って、いくらウソだと言っても納得しないのです。

 「ライオンが逃げた」も「シマウマが逃げた」も、少しネットで調べれば「これはウソだ」という情報に行き当たります。時間の経過とともに、丁寧に説明してくれる人も現れるので、「なあーんだ」ということになるでしょう。でも残念なことに、正しい情報よりウソの情報の方が、速く広く拡散してしまいます。

 正しい情報を広めることも大事ですが、確認はなかなか難しい。そんなことをしているうちにウソの情報はどんどん広まってしまいます。やはり、一人一人の意識を変えていくことから始めるしかありません。交通事故と同じで、ネット上のウソに引っかかってしまうことは、ゼロにはできないけれど、減らすことはできるのです。

急がれるネット教育の充実

ネット教育の充実は大きな課題だ(写真はイメージです)
ネット教育の充実は大きな課題だ(写真はイメージです)

 自動車が普及するにつれ、交通事故が増え、交通戦争と呼ばれた時代がありました。その後、警察だけでなく、自動車を造る側、学校関係者も、交通安全のことをすごく考えて交通安全教育を徹底する中で、どんどん交通事故の死亡者を減らしていきました。

 ネットも同じことが必要です。こんなにものすごい勢いで普及し、大人だけでなく子どもも使っているのに、ネット安全教育が全然、追いついていません。

 今、学校で行われているネット安全教育は、ネットで知り合った人について行ってはいけません、悪い人にだまされてはいけません、というところで止まっています。

 私たちは学校で、大型車の内輪差に気をつけろだとか、雨の日はブレーキが利きにくいといったことを習いました。それと同じように、ネットを使っていると、こういう心理になりやすいとか、意図的にうそをつく人もいるので、それを見抜く力を養わなければならないとか、そうしたことも学校で教えるようにしなければなりません。

プロフィル
碓井 真史( うすい・まさふみ
 新潟青陵大学大学院教授。1959年、東京生まれ。日本大学文理学部心理学科卒。同大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程修了。博士(心理学)。新潟青陵女子短期大学教授、新潟青陵大学教授などを経て2006年より現職。1997年に開設したホームページ「心理学総合案内 こころの散歩道」を通じて、一般の人向けに心の仕組みを伝えている。主な著書に『あなたが死んだら私は悲しい 心理学者からのいのちのメッセージ』(2010年、いのちのことば社)などがある。

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